本研究では、研究成果の公表媒体の電子化が、学術情報の質に対して与える影響を、査読制度に見られる変容という観点から明らかにすることを目指した。文書資料の検討やフォーマル・インフォーマルの聞き取りを中心とする調査の成果は、学術情報の電子化が学術情報の生産と流通の効率化に大きく寄与する一方で、ピアレビューの匿名性の維持や審査対象となる投稿論文の量的拡大という点で重大な問題を提起していることを明らかにしている。また、6ヶ月間にわたる海外調査は、選択的な資源配分と密接な関連を持つ国家規模の研究評価が、発表媒体の論文への過度の集中そしてまた研究方法と対象の幅を狭めていくことの可能性を示唆している。
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