現実の社会問題を解決するための土台として社会的ジレンマを用いるのであれば、たとえば、ごみの減量といった協力行動を行う住民にとってごみ問題とはどのようなものなのか、ということを考慮しなくてはならない。もし、個人にとって状況が「社会的ジレンマ」ではないとすると、これまで検討されてきた解決方法がもつ意味に疑問が生じる。 本年度は、インターネットによる調査票調査を実施した。対象者は全国の2500人で、調査実施日は2015年12月である。調査票調査によってこのような問題を検討する利点は、実験枠組みなどでコントロールされない行為者の考えや行動をそのまま抽出することができる点である。実際に、行為者(当事者)の多くは、たとえばごみ問題について、「地域社会全体への影響を考えず自分の都合を優先してごみを捨てる人が多い」ことがごみ問題の原因であると考えており、ごみ問題が社会的ジレンマの構造を有することを(仮説的に)了解していることがわかった。また、前の年度に分析した結果と同様に、人びとはごみ問題を社会的ジレンマとして(仮説的に)了解しつつも、事実としては非協力行動ではなく協力行動をとる人びとが存在し、それらの人々は、社会的な価値観(「多くの人は自分のことしか考えていない」、「一人ひとりが社会全体に対する影響を考慮して行動すべきだ」など)について、社会にとって望ましい貢献をすべきだと考える傾向があることがわかった。
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