本研究プロジェクトの最終年度では、これまでに収録したデータと先行研究の整理をふまえて、「地域通貨」と「まちの縁側」について経験的な分析が行われ、いくつかの成果が刊行・発表された。 「地域通貨」については、まず千葉県の先進事例「ピーナッツ」の調査結果を代表者の中里がペーパーにまとめ、国際地域学会(The Regional Science Association International:RSAI)の発表論文に採択された。この研究では取引ネットワークの分析から得られたネットワーク指標に会員の属性を変数として投入した分析を行い、どの属性の者同士が取引行為に従事する傾向にあるのかを明らかにした。加えて代表者は釜石市と南三陸町で使われている復興応援地域通貨(東日本大震災からの復興に使われている地域通貨)の実践事例を観察し、復興応援地域通貨フォーラム(於:岩手県一関市)において、その内容の報告を行った。この研究成果は、さわやか福祉財団発行の報告書『地域通貨・時間通貨を活用したふれあいのまちづくり』の一章にまとめられた。 「まちの縁側」については、分担者の平本が京都市内の「まちの縁側」の包括的な調査を行い、ガイドブックの編集と執筆に携わった。この調査に並行して、「まちの縁側」活動を支援するNPO における社会的行為の組織化の調査も進められ、この分析結果が『フォーラム現代社会学』に採択された(平成26年5月に刊行予定)。これらの調査結果は順次刊行される予定である。 最後に、コミュニティ成員間の「つながり」創出に「地域通貨」と「まちの縁側」がそれぞれどんな役割を果たすかを、機能の面から比較した。その結果「地域通貨」はソーシャルサポートのセーフティーネットとしてはたらく一方、「まちの縁側」は多様な「つながり」を創出する機能があることを明らかにした。この分析結果も公刊を検討中である。
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