研究課題/領域番号 |
23530628
|
研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
湯浅 陽一 関東学院大学, 文学部, 教授 (80382571)
|
キーワード | 地方財政 / 財政社会学 / 持続可能性 |
研究概要 |
平成25年度は、英国での長期在外研究中に、「英国電力市場の現状と行方-自由化された市場における原発と再生可能エネルギー」『関東学院大学文学部紀要』(第129号)を執筆した。この論文では、世界で最も早く電力市場の民営化と自由化を進めた英国で行われているEMR(Electricity Market Reform)=電力市場改革を軸として、英国電力市場の現状に対する考察を行った。英国政府は、既存発電施設の老朽化に対処するため、EMRによって、原子力と再生可能エネルギーによる新規発電施設の建設を進めようとしている。英国では、原子力と風力はともに固定価格買取制度の対象となっており、双方が推進の対象となっている。この点は、原子力か再生可能エネルギーかという二者択一的な論調が強く、固定価格買取制度の対象も再生可能エネルギーのみに限定されいるわが国の現状や制度とは大きく異なる。EMRの成否は、英国のエネルギー供給体制、ひいては経済社会に対して大きな影響を与えるが、見通しは予断を許さないものとなっている。とりわけ原子力については、一部の施設で建設計画が進んでいるものの、参入を計画していた企業が相次いで撤退するなど、全体的には厳しい状況にあると判断できる。この論文では、こうした状況が生じている原因として、原子力エネルギーと民営化・自由化された電力市場との不適合性を指摘した。原子力発電所は、巨大かつ予測困難なリスクと向き合いつつ、極めて巨額の資金と超長期に渡る事業計画を必要とすることから、民営化と自由化の進んでいる電力市場では、採算性を確保することが難しいのである。平成25年度は、この論文の執筆に加え、英国内の原子力や再生可能エネルギー関連施設や地域での調査を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は英国での長期在外研究を実施したため、本研究助成金の直接的な使用は限定的なものとなった。しかし英国での調査研究は当初から本研究計画に組み込まれていたため、滞在中の研究活動を、本研究助成金の研究計画と連動させる形で行った。その結果、原子力と再生可能エネルギーを柱とした英国のエネルギー政策の現状や、地方財政制度を軸とした地域社会の実状についての理解を深めることができた。また、スコットランドの独立問題など、間接的ではあるが影響力のある諸問題に対する理解も深めることができた。これらの理由から、本研究計画は概ね順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度中に実施できなかった国内での研究活動と、英国に関わる調査研究の追補を行いつつ、英国での長期在外研究の成果を組み込んだ形での、研究成果の集約を図る。
|
次年度の研究費の使用計画 |
英国での長期在外研究を実施したため、当初計画していた国内調査などが実施できなかった。また、書籍等の物品の購入についても、立て替え費用が必要となるなどの理由から、次年度に繰り越して購入することが適切と判断した。 平成25年度に購入できなかった書籍等の物品の購入、未実施の国内調査の遂行に加え、英国での追補調査の実施に使用する。
|