6月に福島県、8月に英国での調査を実施した。福島での調査では、双葉町・大熊町・富岡町・楢葉町の財政データを昭和40年代以降から収集した。これらの自治体は、福島第一原発の立地もしくは隣接自治体であり、財政や地域の経済・社会について、原発の影響を強く受けてきている。本研究計画では、原発などの施設立地が自治体の財政や地域社会の在り方に対して与える影響の分析を主要課題としている。上記四自治体の長期にわたる財政データの分析は、この課題達成のための一環である。英国での調査においては、英国の電力市場と政策に関するデータを、原子力と再生可能エネルギーを中心に収集した。合わせて同国における高レベル放射性廃棄物処理をめぐる政策に関するデータも収集した。英国は、現在日本が進めようとしている電力市場の自由化を世界に先駆けて実施しており、自由化が、原子力エネルギーなど与える影響についての豊富な経験を有している。また、7月には、横浜で開催された国際社会学会(ISA)の大会において、原発から生じる高レベル放射性廃棄物の処分場の建設に関する報告を行った。高レベル放射性廃棄物を何らかの形で処理することは不可避であるが、そのための施設の建設地探しが難航している。この施設の立地においても、原子力発電所の立地と同様に、地方財政に多額の税収をもたらすことを誘因とする手法が用いられている。報告では、いずれの自治体もこの施設の受け入れを拒否してきたという経過を踏まえつつ、これらの手法の問題点などを指摘した。
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