研究概要 |
組織のデモグラフィカルな分析のために、全国の全業種の企業を対象に生命表分析を行った。全国の、2012年時点で存続している全業種企業1,425,856社と、1984年以後2012年時点までに倒産した371,650社に関するデータを合わせた計1,797,506社を対象に、業種・所在地についての生命表を算出し、生存時間中央値(いわゆる「平均寿命」)の比較を行った。データ上の制約から1983年以前に倒産した企業の情報が欠落しているため、本来の「かつて日本に存在したすべての企業」に関する値よりも今回の分析結果が、実際より長めに算定されてしまうという限界はあるが、現在利用しうるもっとも包括的なデータを用いた分析であることは間違いない。 その結果、全国全業種をひとまとめにした場合の企業の「平均寿命」は89.1976年であることがわかった。また、業種により企業の平均寿命が著しく差を見せており、大分類レベルでみるならば、最も長いのが金融業で、以下農林水産業、不動産業、サービス業、電気ガス水道業、製造業、卸・小売業、運輸通信業、鉱業の順に続き、もっとも短いのが建設業であった。 また、地方間の比較では、中部地方が最長で、以下中国、四国、東北、関東、九州・沖縄、北海道の順に続き、もっとも短いのが近畿であった。地方と業種の交互作用は大分類レベルではほとんど認められず、業種分布に依存しない各地方ごとの特性が企業の平均寿命に影響をあたえている可能性が大いに示唆された。 企業悉皆的な生存時間分析はいままで行われておらず、本研究が最初のものである。今回のデータは株式会社帝国データバンク社が捕捉しえた企業に限られ、かつ1983年以前の倒産企業が除外されているという制約はあるものの、マクロなレベルでの組織変動を考えるうえできわめて価値の高い成果を得ることができた。
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