ポスト工業化社会における社会変動モデルの構築を、組織変動モデルの基礎づけによって理論と実証の両面から試みた。工業化社会では社会変動が組織の大規模化・官僚制化と強く結びついて論じられたが、ポスト工業化社会では組織変動自体の多様化に加えて組織間関係の様態がもつ重要度が増しているため、組織変動と社会変動の関連をとらえるためには新しい枠組みが求められている。 理論面において、組織変動の多様化に関しては、組織社会学で進化論的な議論を展開してきた組織エコロジー・組織デモグラフィーの数理モデルの応用を試みた。また、組織間関係の記述・説明にあたっては、近年組織研究において急速に発展している産業クラスター・産業エコシステムに関する知見を採用した。また、組織変動分析とは別個に論じられることの多い組織間ネットワーク論を組織デモグラフィーと接合することにより、組織間関係論と組織変動論に基礎づけられた組織のマクロな分布状況の変動モデルを構築した。 さらに組織のマクロな分布状況の変動モデルをポスト工業化社会における一般的な社会変動の議論と結びつけるために、「都市化」「情報化」「ネットワーク化」などのマクロな社会変動傾向をもっともよく表現できるソフトウエア産業の立地と進化の状況を具体的に検討し、実証分析を展開した。 平成26年度には、ソフトウエア産業における組織変動と社会変動の関連に関する分析をもとに一般化した諸仮説について、過去の事業所・企業統計調査から経済センサス調査、さらには株式会社帝国データバンクのデータベースのデータをもとに、各都道府県・業種分類をもとに産業エコシステムの析出と、その発展・衰退の状況を包括的に分析し、検証を行なった。
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