研究課題/領域番号 |
23530636
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
春日 雅司 神戸学院大学, 人文学部, 教授 (90152660)
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研究分担者 |
竹安 栄子 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (70131414)
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キーワード | 地域政治 / 地方選挙 / 地域社会 / 女性議員 / ジェンダー |
研究概要 |
本年度は、昨年に引き続き研究対象となっている自治体が合併する前の旧自治体に関する選挙データならびに地域政治・地域社会、さらには女性と選挙、女性と地域社会などに関する資料・文献などを閲覧・収集し、それらを一定程度整理し内容について検討すると同時に、最終年度に向けたとりまとめ方法の構想に着手した。また、初年度に訪問した高山市については選挙データが保管されている県庁を訪問し、主としてそのことと女性と政治に関する補充調査を行った。 旧自治体の選挙データ、地域政治・地域社会や女性と選挙、女性と地域社会などに関する資料・文献などの閲覧・収集にかかわる作業のうち、北斗市については関連する旧自治体を直接訪問したが、大仙市、由利本荘市、横手市、新潟市、佐伯市、豊後大野市、南島原市、雲仙市、長崎市については県庁所在地へ行き、県庁や県立図書館において旧自治体のデータ・資料・文献などを中心に閲覧・収集した。ただ、新潟市の訪問の際、同じ新潟県内に新潟市・長岡市・上越市・佐渡市と多くの自治体が集中していたこともあり、関連する旧自治体が多すぎるため、一回の出張期間では新潟市に含まれる旧15市町村のみ終了したのとどまり、他の3市(旧34市町村)まで手がまわらなかった。高山市は上述のように補充調査をした。そして、収集されたこれらのデータ・資料・文献は可能な限り文書ファイルに整理した。また、地域社会・地域政治ならびに合併などに関する書籍を収集した。一方、収集したデータ・資料・文献などを整理していく中で、それらを統合するための方法についても検討を進めてきた。 この調査を進める意義は、まず何よりも地域社会の変化を選挙というフィルターを通してみるという方法論にあり、同時にこのような試みは前例も少なく今後の地域社会研究に斬新な視点を提供できると自負している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、(1)これまで行ってきた地域政治の分析方法を他の地域に応用する、(2)他の地域のデータ・資料・文献などを用いて「選挙を通じてみた地域社会の変化」を見るための方法論を開発・確率していくこと、であった。 そこで、これまで行った結果から見えてくる課題としては、①方法論の雛形とすべき鳥取県そのものについてもデータや資料・文献などがなお不完全なまま残されている、②まだ一度も訪問していない自治体があること(なお宮城県については震災の影響を考慮し県庁や図書館訪問を最終年度にまわした)、また③補充調査が必要と思われる自治体がいくつか残されている、④女性と政治という点に関して、過去においてはそもそも世間一般の問題意識が極めて希薄であったことから、まともに突き進んではなかなか難しいので、今後既存のものを丹念に掘り起こしていけるかどうか、といったことがある。①については、時間をかけて丹念に補充調査をすればほぼ完全になりうる。②は早期に実施できる。③は全体の整理状況にもよるが、それほど難しいことではないと考えられる。④であるが、共同研究者の協力を得ながらもう少し丹念に見ていきたいと考えている。ただ、①から③についても、実際に調べてみると、とりわけどの自治体においても一定間隔で行われてきたと思われる選挙データの結果の保存が、県の担当部署である選挙管理委員会の姿勢によって、一部でほぼすべて詳細に残してくれているところもあれば、多くは細かなデータのほとんどないものもある(大きな市であれば、市が残してくれていることが多いが、町村にはその結果が残っていないことが多い)という事情が大きな壁として立ちはだかるが、これは「あるものを利用する」ということで解決していくしかないと考えており、結果的にそれほどの障害ではない。
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今後の研究の推進方策 |
達成度で触れた2年目までの課題を克服すること、それを通した地域分析の方法論の開発が最終年度の課題である。これを進めるため、次のような手順と方法をとりたい。①鳥取県の選挙データの確定ならびに地域政治の変化についての分析を進める。②調査予定でありながら手つかずとなっている宮城県(栗原市・登米市の旧19町村)ならびに新潟県のうち、長岡市(10市町村)・佐渡市(10市町村)・上越市(14市町村)の選挙データ・資料・文献の閲覧・収集につとめる。③すでに訪問した自治体のデータ・資料等の整理・分析を進める中で、必要があれば再訪する。④女性と政治、女性と地域社会についてもこれまでの資料・文献をまとめてみて、なお必要があり所在が確認できれば自治体を再訪する。そもそも女性と政治にかかわる資料・文献の存在そのものが圧倒的に少ないという事情があると推測できるものの、それはあくまで推測であって、すでにあるものについてその所在確認などがこれまで十分に行われてきているのかさえ不明である。われわれとしては、少なくとも既存資料や文献で案外見落とされている側面がないか、もう少し検討していく予定である。そして最後に、④地域社会の分析をとりまとめる。 したがって、平成25年度は、一方で、研究計画にある自治体でまだ訪問していないとか、閲覧・収集しきれていないといった自治体にかかわるデータ・資料・文献などの閲覧・収集を進め、これらを整理・分析する。なお、これまで閲覧・収集したデータや資料などのうち、それだけでは十分でないとか、まだ他に重要なデータや資料・文献などの所在が判明し、訪問することでしか閲覧・収集できない場合はすみやかに再訪し収集するが、他方で鳥取の分析枠組みの確定と他の地域を含めた分析方法の開発を進めていき、その結果のとりまとめを行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
以上の課題を達成するための研究費の使用計画については、次の通りである。 ①旅費:これまで震災の影響を考慮しまだ訪問していない宮城県栗原市ならびに登米市の選挙データ・資料・文献などの閲覧・収集を進める。次に、本年、新潟市については訪問したが、同じ新潟県にある長岡市、上越市、佐渡市における選挙データや地域政治・地域社会に関する資料・文献の閲覧・収集を進める。両県の自治体については、県庁や県立図書館などを中心に必要なデータ・資料・文献の閲覧・収集を行う予定である。さらに、これまで訪問した自治体についてもそこで収集した資料・データ・文献などの整理を進め、必要があれば再度訪問する予定である。加えて、本研究の雛形としている鳥取県の地域政治に関するモデルを作成するため、特に空白となっている選挙データの収集ならびに女性と政治に関する資料・文献の閲覧・収集を進める。 ②謝金:これまでに収集した、あるいは今後収集する予定のデータ・資料・文献などの量はかなり膨大である。この整理については、その利用形態からみてPDFファイルにするのが便利かと考えている。したがって、その作業をできるだけ進めていきたい(ただし、予算の優先順位としては、①の旅費と③の報告書の作成を優先するため、結果的に可能な範囲で行うものとする) ③報告書の作成:こうして閲覧・収集されたデータ・資料・文献などは順次その内容を分析し、これまでの方法にもとづいて整理していく。同時に、その整理の過程でこれまでできなかったとか、気付かなかった知見を踏まえ、より斬新で普遍性の強い方法論の開発も進めていきたい。その結果については報告書としてとりまとめていく。 ④事務費:特にデータ・資料・文献(主として複写物)の整理のため、次年度も事務費の支出を予定している。
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