「持続的な地域コミュニティを確立するための条件に関する社会学的研究」というテーマで行った本研究では、主たる研究領域を過疎問題に起きつつ、2011年3月11日に発生した東日本大震災・福島第一原発事故を受けて、震災・原発事故で生じたコミュニティ災害の実態解明、さらにそこからの復興過程のなかでいかに持続的な地域コミュニティを確立しうるのかを多角的に検証した。 過疎問題に関しては青森県津軽地域を調査の中心にすえながら、岩手県、静岡県、山梨県、長野県を比較し、また東京都内では多摩ニュータウン郊外の近郊農村という過密地域の村落コミュニティをも比較対象とした。東日本大震災に関しては、福島県双葉郡富岡町を対象にした検討を3年にわたって行い、また津波被災地については、岩手県野田村、宮城県石巻市、気仙沼市なども調査し、原発被災地との比較を行った。 分析に際してはさらに、過疎問題/震災復興問題に関わる各自治体および政府各省庁の対応についても検証して、その政策内容と地域の実態、住民生活との関連性やズレについても考察を行った。 過疎問題については、現在生活している世代の中ではコミュニティは持続しているが、次世代継承の面からは厳しい現実が2010年問題として明確化しはじめていることを指摘した。さらに学校統合など、人口再生産を持続させる仕組みそのものが少子化を前に閾値を超えて解体しつつあることを指摘した。また原発事故被災地域では、コミュニティ崩壊が危険自治体へと転換する可能性も抽出され、津波被災地では復興防災事業がコミュニティを破壊するリスクを検討した。コミュニティの持続可能性の展開について、今後より入念な考察が必要である。 我が国のコミュニティ政策が大きな転換期にあることは明瞭であり、リスク時代のコミュニティ研究のあり方について過疎、原発事故、大津波災害に関する2014年時点での総括を行った。
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