研究課題/領域番号 |
23530640
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
麦倉 哲 岩手大学, 教育学部, 教授 (70200235)
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研究分担者 |
三井 隆弘 岩手大学, 教育学部, 准教授 (20423840)
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キーワード | 引揚者 / 樺太 / ライフヒストリー / 開拓 / 貧困 / 無縁故 / 戦争 / 家族 |
研究概要 |
樺太からの引揚者について、行政関連の資料ならびに研究関連の資料を収集し、樺太への植民から、戦時下、そして引揚げ段階で起こったことを整理した。その中で、岩手県への引揚者がどのような引揚げ政策の中で、受け入れられてきたのかについても先行研究の整理を行った。 次に、岩手県内への引揚者へのインタビューを20人程度実施し、この方がたのライフドキュメントの中から、岩手県への引揚者の特徴を考察し検討した。さらに、岩手県在住の樺太引揚者の分布について、縁故者からの聞き取りを行った。この中で、岩手県への引揚者の適応様式が一様ではない。つまり、類型化が必要であることが明らかとなった。 そこで次に、岩手県への引揚者を、盛岡への都市生活への適応者と、開拓集落など農村生活への適応者とに分け、それぞれについて、研究レポートを書く必要を痛感し、資料の整理と報告書の執筆を開始した。具体的には、盛岡市在住の引揚者と、岩手町在住の引揚者について、聴き取り調査報告書編集の作業を進めたのである。 そのためにまず、聴き取り調査データを克明に文章化した。次いで、聴き取った一人ひとりの体験と、引揚げ政策年表や、岩手県盛岡市や岩手町内の地域史と重ね合わせて、一人ひとりのライフドキュメントを立体的に把握しようとした。現在、この調査報告書を作成中である。 一方で、作成中の上記報告書をベースにして、岩手県への引揚者を、さらに詳しく類型化するとともに、引揚者ファミリーが総じて抱えてきた労苦について、社会学の観点から分析し総合した論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査は順調に進んでいるものの、成果物の作成という点で、やや遅れている。補助期間内に所定の成果が上がるように、アウトプット化を急ぎたい。 なお、約20万円の繰越金が発生した理由は、一部における現地調査の遅れからきているので、平成25年度において、この一部調査の遅れを取り戻すために、この繰越金を使用する計画です。
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今後の研究の推進方策 |
岩手県内引揚者の調査を継続する。特に昨年度にやり残した調査について、遂行する。 県外の戦時生活経験ファミリーの聴き取り調査を継続する。 現在作成中の、岩手県盛岡市在住の引揚者の報告書、ならびに岩手県岩手町在住の引揚者の報告書を完成させる。 最終的、両報告書を基にし、また本年度に実施する補充調査の結果を踏まえた学術論文を執筆し、科学研究費成果報告書を取りまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度積み残した岩手県内の聴き取り調査を遂行する。 引揚者の戦時体験・戦後体験と共通する体験をもつ人々を調査し、困難な時代を生きたファミリーのライフドキュメントの考察を深めていく。そのための調査を継続するために旅費を活用する。 各種調査記録取りまとめ、研究成果に結び付けていくために謝金を活用する。 調査報告書、科研費報告書を作成するために印刷費・コピー費を支出する。
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