本課題の研究目的は、岩手県内の樺太引揚げ者のファミリーヒストリーを社会学的に調査研究するものである。岩手県は、無縁故の引揚げ者を受け入れた県として注目されるが、岩手県に定住した引揚げ者の中には、有縁故として引揚げたファミリーもみられるということである。この人たちは、家族親戚の縁故を、たよったものであるが、この人たちの場合も無縁故者と同様に、住宅に困窮しているという点で共通している。帰国後の引揚げ者の生活の困窮は、少なからず長く続いた。戦争による教育機会が閉ざされたために、引揚げ者は、しばしば、底辺の労働者の地位に置かれたのではないか。
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