研究課題/領域番号 |
23530641
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
今井 順 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (30545653)
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キーワード | 男性性 / 非正規雇用 / 新しい産業 / 国際情報交換(ドイツ) |
研究概要 |
当該年度において、遅れの生じていた実査を行うことができた。調査に入るにあたり、平成24年度における理論的検討から、実査では「より効果的に非正規雇用者にアクセスでき、かつ彼らの労働契約の状況や労働組織の状況に一定の目配りができる調査対象」を選定する必要が生じており、正規雇用者も含む労務管理の全体を把握しつつ、その中で非正規雇用者がどのように位置づけられているのか、理解する必要があった。 そこで実査の対象として、札幌市のワーク・ライフ・バランス(WLB)推進事業に参加する企業から、特にIT・情報産業に分類される中小企業5社を選び調査依頼を行った。そして、5社に対して事前アンケートと聞き取り、うち4社526名に対するアンケート(有効回答率51.7%)、さらに聞き取り協力賛同者から非正規雇用労働者を含む23名を選び聞き取りを行った。企業の実態を把握しつつ、非正規雇用者にアクセスすることができた。札幌市の事業参加企業を対象とした理由は、市への提出資料で労務管理施策の一部が明らかなこと、また、性別役割分業・男性性への影響のあるWLBについて、企業側で一定の見識を持っていることが期待されたからである。 引き続きデータの分析を続けているが、非正規雇用者の男性性については、やはり企業との関係性から、正規雇用者との比較を行うことが有効であることが分かってきた。企業の労務管理の在り方が労働者の選択肢に与える影響を勘案した上で調査の結果を解釈すると、まず第一に、正規雇用者の企業への社会統合の強さが確認できる。男性の稼ぎ主意識も、正規・非正規を問わず依然強固であった。一方で、転勤やサービス残業など、正規雇用に典型的に求められるいくつかの実践について、非正規雇用者は明瞭に拒絶する態度を見せている。しかし、その結果として稼ぎ主役割を全うできないことに対して、劣等感を抱きがちであることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
若干遅れの生じていた実査を、平成24年度末の予定通りに行った。これまでの理論的検討を活かした調査計画を立て、産業や規模も勘案した上で調査対象を選び、また、企業・労働者を別々に調査するのではなく、それぞれの企業で、管理者・労働組合・労働者のすべてに対して総合的な調査をすることができた。集めたデータを基に、すでに一次分析についての報告書を刊行している。
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今後の研究の推進方策 |
もともと本プロジェクトは平成25年度が最終年度であったが、実査の若干の遅れのため、本来参加する予定であった学会等での発表をすることができず、期間延長を申請し承認されている。今年度があらためて最終年度となるが、すでに収集したデータを基にした一時分析はまとめ終えており、今後は学会発表、学術論文・学術図書出版に向け、より深い分析を行っていく方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に研究代表者(今井)が東北大学から北海道大学に移籍したことにより、当初予定していた実地調査に概ね半年から1年程度の遅れが生じた。その後、平成25年度に入り予定以上の調査を行うことができたが、当該年度に使用予定として計上してあった学会発表旅費については、当初予定していた国内・国際学会への発表が間に合わず、これらの旅費が未使用となったものである。 平成25年度中に調査は順調に進捗しており、一次報告書も刊行している。未使用額については当初予定通り、上記学会発表旅費として使用する予定である。
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