平成25年度は主に以下の点で調査研究を行った。 1.地域づくりに関する動向把握 横手市における住民参加の地域づくりの事例研究で、少子高齢化や大型小売店舗の郊外出店等で社会情勢が変化している駅前商店街を中心とした地域住民意識調査等を行いそこからみえてくる課題に関し、学会発表および研究論文をまとめた。 2.伝統的地場産業集積地における地域内格差の把握 昨年度中に湯沢市の伝統的地場産業である川連漆器産業関連の事業所等について、近年の廃業、転業等の社会移動的状況を把握したが、今年度も引き続き状況把握を行った。また当地域の地域構造の把握のため、漆器産業関連従事者の空間的分布状況を地図上で確認する作業を行い、地域構造の特徴として捉えることができた。また、当地域は他の漆器産業地と異なり、国産の良質な木地を使用した伝統的な漆器作りを保持している数少ない産地の一つであるが、近年のモノづくりの本物志向からそうした製品づくりが再評価され始めている。今後、新たな伝統的地場産業の展開がみられ、地域づくりにつながる可能性もあるため、今後も継続して調査研究していく必要を確認することができた。 3.地域構造把握のための資料収集 地域構造の歴史的把握のため、全国各地の漆器産業集積地の歴史と木地師の移動史に関連する歴史的資料・郷土資料を収集した。特に、研究対象地である秋田県川連漆器の地域形成に関連すると思われる地域(会津若松、輪島、平泉等)を中心に資料収集を行った。 研究期間全体を通じての成果としては、各事例から、地域固有の文脈に埋め込まれた権力構造が歴史的にみられる地域では地域コミュニティにおける住民参加・連帯からの排除がみられ、それが社会変動により変化してきたことを確認できたが、主要対象地の伝統的地場産業集積地に関しては、住民参加の動向まで明らかにならなかったため今後も長期的に調査研究を行う計画である。
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