「地方自治体の総合計画におけるジェンダー視点の主流化」の現状と課題を研究対象地域である茨城県北部地域で重要な政策課題となっている原子力防災と観光・漁業・水産加工という産業分野における女性たちの活動に焦点をあてて明らかにするという課題を設定したが、東日本大震災と福島第一原発事故直後に本研究を開始することになったので、原子力と地域社会の関係を再構築するための自治体総合計画の策定、推進という課題に地域の女性たちがどのように関わりうるのか、原発事故の影響を茨城県内の男女がどのように受けているのか、原子力に対する住民意識の変化に男女差は見られるのかという論点を中心に、2011年度、2012年度、2013年度に原発事故と関連する住民意識調査を実施、それと平行して2013年度には脱原発運動を開始した地域の女性グループへの質的インタビュー調査を実施してきた。最終年度には3年間にわたるアンケート調査の結果データをジェンダー差に焦点を当てて分析し、福島第一原発事故がもたらした日常生活上の変化体験や、原子力の問題とも関連するライフスタイルや環境問題に関する意識、そして原子力関係の意識には注目すべき男女差が存在することが確認できた。また、最終年度に実施した福島第一原発事故後に子どもたちへの放射能の健康影響問題を中心に様々な活動を展開し始めた女性たちへの質的インタビュー調査は、地域の女性たちが政策意思決定過程への参画という課題に突き当たっている現状と、政治的アクターとして女性たちが力量形成を進め、地方自治体の総合計画自体にも大きな影響を与えつつあることも明らかにすることができた。
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