研究課題/領域番号 |
23530649
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
渋谷 百代 埼玉大学, 経済学部, 准教授 (20451734)
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キーワード | 国際メディア / コミュニケーション戦略 / 捕鯨問題 / 日本 / オーストラリア / ニュージーランド |
研究概要 |
本研究は、国際的対立状況にある当事国がどのように国内外でコミュニケーションを展開させているのか、捕鯨問題をめぐる日本、オーストラリア、ニュージーランドの事例を取り上げ分析することから、紛争解決のためのコミュニケーション戦略を検討するものである。 研究3年目の25年度は、コミュニケーション戦略の検討のためのデータ収集の中でも、情報の受け手側である個人の捕鯨への態度に関する調査・分析および国際交渉コミュニケーションの事例に関する資料収集・分析を行った。 まず、情報の受け手側の捕鯨への態度については、その態度の根拠になる情報の入手経路もあわせて、面接で聞き取りをした。面接対象となった日本で生活するオーストラリア人、ニュージーランド人には、母国メディアのメッセージに埋め込まれるフレーム(物語の構成)パタンと同調する者、日本社会を知って態度が変化した者等、日本での生活の仕方やパーソナリティによって個人差が出てくることが明らかになった。さらに分析を深める必要はあるが、受け取る情報の量と内容と個人の置かれた状況によって選択的消費バイアスを越えて敵対的態度に変化が起こり得ることを示唆する結果が得られた。 他方、国際交渉コミュニケーション事例の資料として、南極海での捕鯨の中止を求めオーストラリアとニュージーランドが日本に対して起こした国際司法裁判所の裁判資料を収集し、分析用にデータ化した。裁判をめぐっての日本とオーストラリア、ニュージーランドのコミュニケーションの違いが傾向として把握できたが、詳しい分析は次年度の課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
大学内で新規の業務分担が加わったため、研究のための時間がほとんど確保できなかったことが主たる理由である。状況を変えようと様々工夫はしたが、個人レベルでの努力・工夫には限界があった。 結局、前年度から持ち越している部分である情報の受け手への聞き取り調査の一部を実施しただけで、計画当初から予定していたコンフリクトマネジメント戦略の枠組みを使った全体のデータ分析については、まったく手がつかず、次年度に持ち越さざるを得なくなった。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は最終年度であり、前年度から持ち越された課題をクリアし、その上で成果発表を国際的学術ネットワークで発信していくことで、プロジェクトとして終結させる予定となっている。しかし、当初の計画段階で想定した遅れ以上に研究は遅れているので、26年度以降も成果発表等については続けていくことになる。 前年度から持ち越しとなっている、コンフリクト・マネジメント戦略の枠組みを使いこれまでに集めた各データ分析をなるべく早い段階で行い、2014年3月31日判決の出た捕鯨をめぐる国際司法裁判所を舞台にしての裁判についての資料分析も加えて行う。後半には論文等の執筆を行い、国際ジャーナル等に投稿をするほか、書籍についてもマニュスクリプトを準備する。
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次年度の研究費の使用計画 |
使用する予定であった論文英文校正が、年度をまたいでの納品になってしまうことが明らかになったため。 次年度使用額については、当初予定していた項目で次年度に使用することになっている。
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