2012年3月~6月、新潟県新潟市において実施した調査票調査の結果を引き続き分析した。さらに、10名のインフォーマントから、地域生活と地域活動について聞き取り調査を実施・分析した。それらを通して、ジェンダーの視点から、社会関係資本の概念や枠組みについて検討をすすめた。ジェンダーの方法論として、地域社会における紐帯の量や型だけでなく、公的領域、私的領域という二重のシステムの視点がとりいれられる必要がある。ケア活動にその二重システムの問題が顕著にあらわれることから、以下の課題について特に注目して、分析と考察をおこなった。課題1:社会関係資本となる活動や規範意識はケア活動とどのような関係にあるのか。課題2:社会関係資本はジェンダー問題に貢献するのか。 その結果、以下のことが明らかになった。 まず、認知的社会関係資本(SC)には男女差はあまりみられず、構造的SCの方にジェンダー差があらわれる。構造的SCの中では、男性は結合型SCが、女性はケア型SCが多い。男性の場合、SCは投票行動や寛容性といった市民意識と関連しているが、ジェンダー公正意識とは無関連である。女性の構造型SCについても同様である。ケア型は市民的な意識やジェンダー意識には関連せず、個人的なネットワークや職場でのネットワークが重要となっている。 したがって、課題1については、家やケア活動から離れた個人的なつながりや職場のネットワークが女性のSC政策では重要な意味をもっている。女性の得意分野を生かすというより、従来の性別役割とは異なる活動やネットワークを育成することが必要であろう。課題2については、SC量を増やすために地域や社会のつながりを密にしようという政策は、それがジェンダーブラインドな政策である場合、男女不平等の再生産につながるという危惧はある程度妥当性をもった批判であり、ジェンダー公正なSC政策が必要だといえる。
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