研究課題/領域番号 |
23530658
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
田邊 浩 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (50293329)
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研究分担者 |
竹中 均 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90273565)
松田 洋介 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (80433233)
竹内 慶至 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 助教 (80599390)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 発達障害 / 医療 / 障害者福祉 / 差別 / 福祉国家 / 科学技術 |
研究概要 |
今年度は,研究実施計画に示したとおり,主として市民を対象とした自閉症や障害に関する意識調査に傾注した.発達障害のある人びとへの支援を検討するためには,発達障害について市民がどのように考えているかを知ることも重要であると考えるが,これまでそうした調査は行われてはいない.その意味で,私たちが実施した調査は一地方都市で行われたものとはいえ,意義を有するものと考える. 「発達障害と共生社会に関する意識調査」と題したその調査は,20歳以上70歳未満の金沢市民994人を対象として,郵送法によって実施した.住民基本台帳を抽出台帳として確率比例抽出法で標本抽出を行った.調査の実施期間は2011年10月21日~11月30日であり,有効回収数は581票、回収率は58.5%であった.この種の調査の回収率としては比較的良好であり,データの質・量ともに十分であると考えられる. この調査の分析から得られた主な知見は以下のとおりである.「自閉症」という言葉はかなり知られていたが,「アスペルガー症候群」や「高機能自閉症」,「自閉症スペクトラム障害」などのタームは「まったく知らない」という割合が非常に大きかった.発達障害の「早期発見」に対して非常に肯定的な傾向が見いだされた.また,病いや障害のことは「専門家にまかせたほうがよい」という意見に対する肯定的な傾向も見いだされ,権威主義的態度および性別との関連もみられた.さらに,発達障害の薬による治療に対する危険性については性別,教育年数との関連がみられた.現時点では,単純集計や2変数レベルでの分析にとどまっているので,これからさらに分析を進める予定である. 意識調査以外に,発達障害者家族調査および学校調査に着手した.これは次年度も継続して行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災の影響もあり,今年度に実施した金沢市民を対象にした意識調査のスケジュールは予定していたよりもあとにずれ込んだ.しかし,調査を実施し,データを整備し,単純集計ほか二変数レベルの分析までは今年度中に終えることができた.このデータの本格的な分析は次年度前半に持ち越されたが,次年度の日本社会学会大会で報告することを予定している.また,計画していた当事者を含んだ発達障害者家族調査および学校調査にも着手しており,予定していた段階までは作業を進めている.以上より,本研究は当初の計画からしても,ほぼ順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
研究は概ね順調に進展しているため,特に計画を変更することは予定していない.市民に対する意識調査は終えたので,データの分析に集中する.発達障害者家族調査,学校調査は進行中であるが,平成24年度までで一定の目処を付ける予定である.それらのデータの分析などから得られた知見を整理し,理論的考察を深めていくことに力を注ぎたい.そのために,電子メール等のやりとりのみならず,研究会をより頻繁に開催して情報交換を密に行い,研究成果を生み出すことにつなげてゆく.また,最終年度に,研究成果を本として公刊することを計画しているが,そのための準備作業を進める予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
発達障害者家族調査,および学校調査では聞き取り調査を実施しており,さらに次年度も継続する予定である.これらの音声記録を反訳して,文字データとして利用可能にする.そのために業者に反訳を依頼するが,それに研究費を使用する.発達障害者家族調査および学校調査の調査作業の補助として,学生に協力してもらう.そのための謝金として,研究費を使用する. 市民意識調査のデータ分析や分析結果の公表のための作業補助を学生にお願いする.これらは本来,本年度に実施する予定であったが,調査スケジュールの若干の遅れによりそこにまで至らなかった.本年度執行できず,繰り越すことになった研究費を,学生への謝金にあてる. 意識調査の分析結果を学会で報告する予定である.また,研究成果をまとめあげるために,数度にわたってメンバー全員での研究会を開催する.それらのために,旅費を必要とする.次年度使用額の一部を,これにもあてる. その他,自閉症および発達障害関係の最新の資料を購入する. 以上が,次年度の主とした研究費の使用計画である.
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