• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

現代社会における自閉症スペクトラム障害の社会認識と医療化に関する総合的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23530658
研究機関金沢大学

研究代表者

田邊 浩  金沢大学, 人間科学系, 准教授 (50293329)

研究分担者 竹中 均  早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90273565)
松田 洋介  金沢大学, 学校教育系, 准教授 (80433233)
竹内 慶至  金沢大学, 学内共同利用施設等, 助教 (80599390)
キーワード自閉症スペクトラム障害 / 発達障害 / 医療 / 障害者福祉 / 差別 / 福祉国家 / 科学技術
研究概要

今年度は,研究実施計画に示したとおり,金沢市において実施した市民意識調査のデータ分析を行った.また,科研では予定していなかったものであるが,金沢市で実施した意識調査とほぼ同様の調査を,石川県白山市の委託により実施し,データを手にすることができた.これにより,金沢市と白山市のデータを比較することができ,分析の精度をあげることができた.おおむね,両市での回答傾向は一致しており,これらの調査結果はかなり一般化できるものではないかと予想している.
得られた知見は以下のとおりである.(1)自閉症に関する認識について,因子分析を行った結果,2つの因子を見出すことができる.第1因子は,「自閉症は心の病」「家に閉じこもりがち」「社会が自閉症を生み出す」「親の育て方が悪い」に関して負荷が高いので,「世俗的認識」と解釈する.第2因子は,「自閉症の原因は遺伝」「自閉症の原因は脳機能障害」において負荷が高いゆえ,「医学的認識」と理解できる.(2)年齢が高いほど,世俗的認識をもっている.女性のほうが医学的認識をもっている.発達障害・精神障害の人との関わりのある人のほうが,医学的認識をもっている.発達障害に関する授業・講演を受講したことがある人のほうが,医学的認識をもっている.(3)年齢が高い人のほうが,乳幼児の検診を拡充することに賛成である.学歴の高い人のほうが,検診拡充に慎重である.子どものいるひとのほうが,検診拡充に賛成である.自閉症の原因に関して世俗的認識をもつひとのほうが,検診拡充に賛成である.(4)女性のほうが薬物治療に賛成である.学歴の高い人のほうが薬物治療に慎重である.
発達障害者家族調査および学校調査に関して,調査自体はほぼ終えることができたが,分析はまだ中途の段階である.次年度も継続して行う予定である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実施計画のとおり,今年度までに予定していた調査はほぼすべて終えることができた.さらに,それら調査から得られたデータの分析を進めた.
市民を対象とした意識調査に関しては,データ分析もほぼ終えることができ,報告書や学会等で研究成果をすでに発表している.
発達障害者家族調査および学校調査に関しては,調査自体はほぼ終えることができたが,データ分析はまだ中途の段階である.現在の進行状況から,次年度前半までにはその作業も終えることができると見込んでいる.
以上より,本研究は,ほぼ計画のとおり,順調に進展していると考える.

今後の研究の推進方策

研究はおおむね順調に進展しているため,とくに研究計画を変更することは予定していない.発達障害者家族調査,学校調査で得られた質的調査のデータ分析はまだ中途の段階に留まっているので,今後は急いでこの作業を進めていく.
次年度は研究全体を取りまとめる.とくに,量的調査,質的調査,両調査データの分析から得られた知見をよく検討し,理論的考察を深めいくことが今後の大きな課題である.
研究成果を本として公刊することを計画しており,この準備もすでに行なっているが,次年度はより具体的にその作業を進めていく.そのために,研究メンバー全員参加による研究会を頻繁に開催する予定である.遅くとも次年度内には原稿を集め,2014年中には刊行したいと考えている.

次年度の研究費の使用計画

市民意識調査のデータ分析や分析結果の公表のための作業補助を学生に協力してもらい,謝金を使用する予定であったが,多くを研究メンバー自身によって処理することができ,作業もスムーズに進んだため,計画していたよりも今年度の謝金の支払いが少なくて済んだ.発達障害者家族調査および学校調査のデータ分析はまだ作業が残っており,この作業補助として学生の協力がなお必要であるので,繰越金はこれに充てる.
メーバーの一人が昨年度後半に海外出張で不在だったこともあり,研究メンバー全員で会合を持つことが予定通りにはできなかった.次年度は,本研究全体の成果をまとめあげ,それを具体的に本の形にするために,メンバー全員参加による研究会を頻繁に行う予定である.そのための旅費を必要とする.繰り越すことになった研究費は,おもにこれに使用する.
また,研究成果報告書も作成し,関係者に配布する予定である.資料がかなりの量に上るため,報告書印刷に予定していた以上の費用が必要となる見込みである.繰越金は,これにも充てる予定である.
以上が,次年度の主とした研究費の使用計画である.

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (8件) 図書 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] いま,なぜ,「地域の居場所」なのか?2013

    • 著者名/発表者名
      田邊浩
    • 雑誌名

      金沢大学地域政策究センターニューズレターCURES

      巻: 99 ページ: 1-4

  • [雑誌論文] 今月の書評・シリーズ『グローバル化時代の大学論①・②』2013

    • 著者名/発表者名
      竹内慶至
    • 雑誌名

      月刊高校教育

      巻: 2013年1月号 ページ: 92

  • [雑誌論文] 今月の書評『医療とは何か』2012

    • 著者名/発表者名
      竹内慶至
    • 雑誌名

      月刊高校教育

      巻: 2012年10月号 ページ: 100

  • [学会発表] 地方都市における市民の発達障害認識

    • 著者名/発表者名
      田邊浩・竹内慶至・工藤直志・松田洋介
    • 学会等名
      第85回日本社会学会大会
    • 発表場所
      札幌学院大学(北海道)
  • [学会発表] 戦後民間教育運動における進路指導問題の構造とその変 容―1960-70年代における全国進路指導研究会の展開に焦点をあて て

    • 著者名/発表者名
      松田洋介
    • 学会等名
      日本教育学会第71回大会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県)
  • [学会発表] 復興」と義務教育-被災地の現在と教育研究の課題

    • 著者名/発表者名
      松田洋介・妹尾渉・山本宏樹
    • 学会等名
      第64回日本教育社会学会大会
    • 発表場所
      同志社大学(北海道)
  • [学会発表] 自閉症と社会

    • 著者名/発表者名
      竹内慶至
    • 学会等名
      『その子らしさと自閉症』(主催石川県金沢市天徳幼稚園「幹の会」)
    • 発表場所
      金沢市天徳幼稚園(石川県)
  • [学会発表] 自閉症の医療化と社会問題化

    • 著者名/発表者名
      竹内慶至
    • 学会等名
      日本保健医療社会学会第216回定例研究会
    • 発表場所
      大阪大学豊中キャンパス(大阪府)
  • [学会発表] 大学における自閉症

    • 著者名/発表者名
      竹内慶至
    • 学会等名
      自閉症スペクトラム研究会
    • 発表場所
      北陸学院大学(石川県)
  • [学会発表] 白山市市民調査と保護者の分析ー発達障害と共生社会に関する意識調査のデータ分析から

    • 著者名/発表者名
      田邊浩
    • 学会等名
      白山市障害者等自立支援協議会療育検討会議
    • 発表場所
      白山市民交流センター(石川県)
  • [学会発表] 発達障害のある人びとに対する支援,関わりの意識ー調査データの分析から

    • 著者名/発表者名
      田邊浩
    • 学会等名
      白山市障害者等自立支援協議会拡大療育検討会議
    • 発表場所
      白山市民交流センター(石川県)
  • [図書] 地域創造学2013

    • 著者名/発表者名
      田邊浩
    • 総ページ数
      118
    • 出版者
      金沢電子出版
  • [図書] 金沢大学社会学研究室2013

    • 著者名/発表者名
      溝部明男・竹内慶至編
    • 総ページ数
      229
    • 出版者
      発達障害と共生社会の計量社会学的研究
  • [図書] 精神分析と自閉症2012

    • 著者名/発表者名
      竹中均
    • 総ページ数
      324
    • 出版者
      講談社
  • [図書] 金沢大学障害と医療・福祉研究会2012

    • 著者名/発表者名
      田邊浩編
    • 総ページ数
      145
    • 出版者
      発達障害に関する市民意識ー発達障害と共生社会に関する意識調査
  • [備考] 金沢大学「障害と医療・福祉」研究会

    • URL

      http://ristex-kanazawa.w3.kanazawa-u.ac.jp/research/index.html

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi