研究課題/領域番号 |
23530660
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鶴巻 泉子 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (70345841)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | エスニシティ / 地域主義 / ナショナリズム / レイシズム / ブルターニュ / アルザス / カタルーニャ |
研究概要 |
本研究は、フランスのブルターニュとアルザス、スペインのカタルーニャという三つの「歴史的地域」を例に、領域的マイノリティと移住者との関係がエスニック化(racialized / ethnicized) される社会学的条件について、一連の少数文化地域における移民研究に依拠して考えようとするものである。(1)研究の初年度である23年度は(1)現地での予備調査、(2)基本的な統計収集、(3)先行研究レビューを行った。ただし(1)の予備調査に関しては、日程・調査先の都合によりブルターニュとカタルーニャにおいてのみ調査と資料収集を行った。24年度の本調査につなげるため現在分析を続行、また調査で得た資料分析の一部を論文で発表している。(2)23年度に多くの時間を割いて行ったのは,現地調査・資料統計収集や研究レビューの他に、選挙結果の分析だった。フランスの二地域ではそれぞれ小郡選挙(「カントン」と呼ばれる行政単位)が2011年に行われ、スペインのカタルーニャでは国・州議会・市町村レベルの選挙が2010-2011年に行われたのだが、三地域全てにおいて極右政党が大きな躍進を遂げたからである。極右政党の中には国民国家重視のものもあるが、地域主義的極右も含まれる(カタルーニャ)。「歴史的地域」におけるレイシズムや包摂/排除を考える上で、極右政党の三地域での躍進は言うまでもなく大きな問題であり、極右票ー地域主義票の関係、極右政党の言説の分析を現在も続行中である。(3)極右政党の進展、外部からの流入者への反感、国民国家への期待の高まりと(あるいは)地域共同体への回帰という政治空間での変化は、この一年で急速に進行したヨーロッパ(特にユーロ圏)での経済不安の高まりと切り離せない。マクロレベルでの変化をどのように地域内分析について位置づけるかを考えることも重要な課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通り進行しているが、調査対象のアルザスでの調査を23年度行うことができなかったため、24年度に持ち越しとなっている。(23年度8月の調査では調査先の都合によりカタルーニャでの調査が不可能となり、それを3月に持ち越したのだが、3月には大学業務の関係により調査期間を十分に確保できなかったため。)
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定について、申請時に組んだ計画から見た大幅な変更は無い。ただし、前年度調査できなかった地域での調査を早急に行う必要がある。平成24年度には、23年度の調査で得た情報を元に調査対象都市・団体を選択した上で本調査を行うことが最も重要な課題となる。また23年度に予備調査を行えなかったアルザスについては、早急に予備調査を行った上で、そのまま本調査を行う。同時に少数文化地域と移民問題に関する研究レビューを続行、それに並行して、フランス・スペインの国レベルでの移民研究にも目を通す。平成25年度は補完調査と調査結果の最終的な分析、研究成果の発表が主な予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用について、申請書提出時から大きな変更は無い。平成24年度では本調査を行うため、調査費用(旅費)にもっとも大きな支出を行う(:8-9月と2-3月の時期に、それぞれ4週間程度の調査をアルザス、ブルターニュ、カタルーニャで予定している)。また物品費に関しては前年度に必要なものをすでに購入しているため、大きな出費は無い予定である。人件費・謝金は論文校正の費用を計上してある。
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