25年度は最終年度であり、オイ族の集落で行ってきたこれまでの調査のまとめおよび補足調査を行った。昨年度までのデータをまとめた結果、おおきく、以下の4点が明らかになった。①相続については、少なくとも低地移住後(1978年~)は、すべての子供に均等に農地や家畜を分けようとする傾向があるため水田も家の数も増加し続けていること、規模を拡大する際には開墾をして拡大してきこと、②この数年のあいだに急速な勢いで現金経済化が進んでいるが、水田漁撈のための池は増加し続けていること、③水田の売買がさかんに行われていること、④子供や高齢者の栄養状態や食事内容を調査した結果、自然災害には大きく影響されておらず相互扶助システムや採集による食糧確保が機能していること、などが明らかとなった。 焼畑によって生計をたてている近隣地域の集落と比較して、水田での稲作と水田漁撈を維持しようとする傾向は強いことがうかがえたが、人口(世帯数)増加、土地不足、環境(とくに水環境)変化、灌漑用水の普及にともなう農業の機械化(近隣諸国からの機械の売り込みがはじまっている)に対する対応が今後の変化を大きく左右することがうかがえた。 本年度の調査で新たに得られたデータは、ラオス南部で展開されているゴムやさとうきびのプランテーション農園の労働実態や住民と会社の契約内容についてのデータおよび、大規模開拓(とそれに伴う森林伐採)による環境変化のうち、とくに集落での生産活動に関することがらについての聞き取りである。ただし、これらのデータについては9月に現地に赴いたが、市街地も農地も洪水のために調査地に入ることができず、乾季である3月に再度補足調査を行ったため、現在分析中である。また、集落単位での農業関係統計なども入手できたので、現在翻訳中である。
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