日本の人口移動統計には住民基本台帳人口移動報告と国勢調査報告人口移動集計があるが、いずれも配偶関係別の移動人口数は集計されておらず、有配偶、未婚、離別、死別ごとの移動率の相違や地域の人口構造に与える影響は殆ど未解明に止まっている。本研究では国勢調査で人口移動集計が実施される大規模調査年の2000年と2010年に合わせ配偶関係別純移動率を推計するともに、総務省統計局に特別集計を申請し実測値を求め、推計手法の精度確認と改良を行った。 初年度では2000年-2005年、1995年-2000年、さらに2010年の国勢調査の結果を受け2005年-2010年の配偶関係別純移動率の推計を行った。また、すでに公表済みの2000年国勢調査の前住地データの個票を総務省統計局に特別集計を申請し、SPSSを使い配偶関係別に再集計することに成功した。2年度目は3区間の推計結果を比較分析するとともに推計モデルの改良を進め、その成果を日本人口学会(第64回大会2012年6月)で報告、論文化し大学紀要(2013年3月)に投稿・掲載した。また2000年国勢調査の前住地データを独自集計した結果と1995年-2000年の推計モデルによる推計結果の比較検討を行ない、その成果を日本人口学会・東日本部会で報告した(2013年3月)。最終年度では2010年国勢調査報告人口移動集計の特別集計を申請し独自集計した結果と2005年-2010年の推計結果との比較検討を行ない、その成果を日本人口学会・東日本部会で報告(2014年3月)した。なお、この内容を論文化したものは大学紀要(2015年3月発行予定)に投稿する予定である。 この研究プロジェクトを通じ、札幌市をケーススタディに「配偶関係別移動の分析」という人口移動研究の新領域を拓くことができた。
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