研究課題/領域番号 |
23530670
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研究機関 | 青森県立保健大学 |
研究代表者 |
川内 規会 青森県立保健大学, 健康科学部, 講師 (30315535)
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研究分担者 |
オガサワラ メリッサ 青森県立保健大学, 健康科学部, 助教 (60457736)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 医療通訳 / コミュニケーション / 外国人患者 / 医療従事者 |
研究概要 |
本研究は、医療現場の言語上のコミュニケーション問題を直接的に解決することのできる医療通訳に焦点を当てながら、外国人患者や医療従事者が抱えている医療現場での言語上の課題を調査し、医療通訳の今後の可能性を考察するものである。 調査方法は、包括的に3方向から質問紙調査及び聞き取り調査を行った。1)国内5か所で活動している現役の医療通訳者や通訳関係者から、聞き取り調査を行い、通訳派遣の現状や通訳者の立場としての問題点、外国人患者への関わり等を明らかにした。2)Z県在住の外国人を対象に医療現場の使用言語、医療従事者とのコミュニケーション、医療通訳の活用という観点から質問紙調査を行った。外国人が日本の医療を受ける立場になったとき、医療従事者との間に、どのようなコミュニケーション不安をもち、言語的トラブルが発生するかを明らかにした。また、それを解決するための医療通訳の存在を重ねて考察した。3)Z県内の現役医療従事者(看護師)を対象に、日本語がわからない外国人への対応状況について、質問紙調査および聞き取り調査を行った。インフォームドコンセントが重要視されている現代の医療現場に、誤解のないやり取りがどこまで可能であるか、今後の課題が見える。特にZ県は、国内でも在住外国人が少ない県であるが、外国人集住地域をもたない多くの地域では、普遍的な問題を抱えていることが示唆できる。 今後、言語的側面から医療現場でのコミュニケーション問題を整理し、医療通訳との関わりを捉えなおし、医療通訳運用の課題と方向性を検討する。医療従事者の言語的負担とリスクを軽減できるように、また、外国人が安心して医療行為を受けられる環境作りの一端を担うよう、医療通訳者の存在をあらためて見直すとともに、日本における医療通訳の今後のあり方を考察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本調査は、1年目から、予定通り包括的に3方向から質問紙調査及び聞き取り調査を行っている。特に、医療通訳者や医療通訳関係者の調査から、通訳派遣の現状や、通訳者の立場の問題点、日本語使用の困難な外国人患者との関わり等が得られた。医療通訳に関しては、現状ですでに多くの問題点を抱えているので、外国人患者や医療従事者がもとめている医療通訳の姿を照らし合わせながら、現状問題をどこまで解決できるか、具体的な方策を今後見出したい。 医療従事者対象の調査と、在住外国人対象の調査は、1つの特定の県に限って行ったため、予定の対象人数より少ないものになったが、医療従事者とのコミュニケーションや医療通訳の活用等の観点から、外国人が日本の医療従事者にどのようなコミュニケーションに不安をもち、どのような言語的トラブルが発生するかが明らかになってきている。これらを解決する方策を導き出し、医療通訳の存在と重ねて検討していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は、医療通訳者の聞き取り調査は、全国的に行ったが、他の調査は内容に合わせて1つの県のみを対象として行った。2年目は、1年目の基礎的データをさらに分析し、対象者と対象地域を広げる予定である。また、新しく医療通訳養成機関への調査も計画中である。 研究の費用に関しては、必然的に調査旅費やデータ分析などの項目は、初年度以上にかかる事が考えられる。 さらに、2年目の進み具合によるが、必要と判断したときには、医療通訳養成講座の実施も今後考えられるため、そのための準備に充てる可能性もある。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用計画については、大まかに以下の3点が考えられる。1)旅費に関して、現在、2地域での調査を計画中である。調査対象として適するか、また受け入れ体制があるか調査する旅費がかかる。また、その地域の確保ができた時には、頻繁に往復する事になるためその費用が必要である。2)1年目のデータをさらに分析し、2年目データを照らし合わせていく計画であるため、データ処理や分析費用、人件費等がかかることが考えられる。3)分析ソフトや図書の購入、記録用物品購入などが必要となる。 その他、医療通訳養成講座を開く必要があると判断した場合には、その準備の費用も考えておきたい。
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