研究課題/領域番号 |
23530671
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
坪谷 美欧子 横浜市立大学, その他の研究科, 准教授 (80363795)
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キーワード | 国際移民 / 在日中国人 / 滞在者 / アイデンティティ |
研究概要 |
2000年以降に来日した若い世代の留学生と就労者10名への聞き取り調査のデータを、80~90年代に来日した中国人と比較しながら、在日中国人という存在の含意を考察した。かれらの渡日や日本滞在の意味づけはいまだ解明されておらず、中国から日本への留学をめぐるかつての世代と比較した考察が必要とされている。 現代の在日中国人たちにとっては、母国で拡大するリスクを回避あるいは猶予のために来日し日本滞在を続ける、以前より「保守化」しいわば「保険」をかけるような生き方が明らかになった。とくに母国中国において就職活動におけるネポティズム、両親の介護や結婚など、「伝統」が再強調される場面が増えており、それらの重圧がますます日本滞在の延長に拍車をかけている。80~90年代に来日した就職者からは「日本型経営」の保守性や外国人(中国人)であることゆえの待遇への不満が批判される傾向にあったが、それらにむしろ「安定」を見いだし、かなり堅実なキャリアアップを指向する若い在日中国人像が浮き彫りになった。 中国人のアルバイトや就職の経験からは、日本語や日本の習慣を身につけた、日本人社会に合わせられる人物であることが大学で学んだ専門知識や技術より優先され、いわば「日本人」と同じであることが求められているようにもみえる。「日本人と同じ」とされてしまうことにより、労働者として弱い立場であることをかえって曖昧にしかねない。アルバイトと就職の間のキャリアについては今年度の調査では十分に解明はできなったが、「結果としての移民」あるいは「技能形成型」移民としての在日中国人の存在を、政府、企業、大学、そして自治体や地域社会もいかに正面から認識すべきかが課題となるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は出産のため、産前産後休業および育児休業を取得したため、研究期間が3ヶ月のみとなってしまった。そのため「産前産後の休暇又は育児休業の取得に伴う補助事業期間延長」の申請を行い、研究期間を1年間延長し本研究を遂行することにした。 平成25年度は、2000年以降に来日した若い世代の留学生と就労者10名への聞き取り調査を行い、80~90年代に来日した中国人と比較しながら、在日中国人という存在の含意を考察した。かれらの渡日や日本滞在の意味づけはいまだ解明されておらず、中国から日本への留学をめぐるかつての世代と比較した考察のために必要な調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
移民の送り出しの地域レベルにおける経済的・社会的影響についての中国東北地方での現地調査を予定している。中国東北部においては、移民の送り出しに関わるビジネスや親族ネットワーク、そして日本からの送金、親族の扶養など家族や世帯レベルでのネットワークなど、日本への移住という行為がどのように生活世界に影響を及ぼしているのか検証する必要がある。日本への移住者から中国東北地方の家族等への送金の額も、決して少なくないとみられている。留学経験者による帰国後の就職斡旋や起業パークの創設、地元への再投資や起業等などの帰国優遇政策についても、東北地方の各都市で活発になりつつある。こうした移民の送り出し地域レベルにおける経済的・社会的影響について解明しなければならない。 具体的には、①海外留学・労務斡旋会社、②渡日経験者とその家族へのインタビュー、③帰国後の優遇政策を実施する機関などへの聞き取り調査を予定している。また日本への移住者のいわば「予備軍」とも言える中国における日本語人材について、日本語教育を行う高校・大学や、IT・アウトソーシングを中心とした日系企業、中国の朝鮮族等を対象として、大連・長春・ハルビンにおいて調査を行う。現地調査については、合計2-3週間程度の渡航費・滞在費にあてる予定である。 質問紙調査については、質問紙作成、印刷、送付、回収、分析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は出産のため、産前産後休業および育児休業を取得したため、研究期間が3ヶ月のみとなってしまった。そのため「産前産後の休暇又は育児休業の取得に伴う補助事業期間延長」の申請を行い、研究期間を1年間延長し本研究を遂行することにした。そのため、次年度使用額が生じた。 具体的には、①海外留学・労務斡旋会社、②渡日経験者とその家族へのインタビュー、③帰国後の優遇政策を実施する機関などへの聞き取り調査を予定している。また日本への移住者のいわば「予備軍」とも言える中国における日本語人材について、日本語教育を行う高校・大学や、IT・アウトソーシングを中心とした日系企業、中国の朝鮮族等を対象として、大連・長春・ハルビンにおいて調査を行う。現地調査については、合計2-3週間程度の渡航費・滞在費にあてる予定である。質問紙調査については、質問紙作成、印刷、送付、回収、分析を行う予定である。 本研究の最終年度にあたるため、これまでに得られたデータ分析をもとに仮説を検証し、中国人移住者による国際移民システムの精緻化を完成させる。またその結果は、国内外の学会や学術雑誌(日本語、英語、中国語)等で発表したい。これらの成果は学術図書として出版し、その内容を広く公開したい。
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