在日中国人は1980年代より留学生を中心に増加し始め、2013年末の時点ではおよそ65万人(台湾籍者は除く)と、「韓国・朝鮮」の52万人を大きく上回っている。在留資格別でみると、「留学」は10万人以上、「技術 」と「人文知識・国際業務」合計で約5万人、そして「永住」は 20万人以上にのぼる(法務省入国管理局ホームページ2014)。 留学生の受け入れは、「留学生30万人計画」にみられるように、世界的な学生・人材獲得競争のなか、先進諸国においても単純労働者受け入れに比べ好意的に捉えられているが、留学生のなかで、サービス・小売業分野でアルバイトをしている6割を超えている(厚生労働省職業安定局 派遣・有期労働対策部外国人雇用対策課2013)。そして卒業後の日本企業への就職の問題となると、積極的に支援の対象と位置づけられ、その「労働者」としての存在の二重性の意味が再検討されるべきである。 経済成長のポジティブな側面だけが見えていた1980~90年代と比べ、在日中国人にとっての帰国の意味は様変わりしている。当時は「中国の発展状況により、自分の価値が高く評価される時期に帰りたい」という声が多かったが、現在では帰国への強い意思は明らかに少なくなりつつある。中国人の海外留学全体が増加し、「留学帰り」であることが社会で通用しなくなりつつあることに当事者たちは非常に敏感である。さらに住宅や医療等の社会保障の水準は非常に低く、将来の自分たちの住居や両親の介護などを公的住宅・年金などに頼るという意識自体持つことが困難になってきている。中国経済の市場化により切り捨てられる福祉や社会保障を、「親孝行」「イエ」「中華民族の伝統」などによりカバーしようとするあまりに、若者にとっては自身が発展する可能性が狭められており、こうしたことが日本留学への動機や日本滞在の長期化と強く影響を及ぼしているといえる。
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