研究課題/領域番号 |
23530675
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
中島 正博 広島市立大学, 国際学部, 教授 (60264925)
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研究分担者 |
柳 幸典 広島市立大学, 芸術学部, 准教授 (30405493)
金谷 信子 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (20509062)
高橋 広雅 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (80352540)
瀋 俊毅 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (10432460)
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キーワード | 瀬戸内国際芸術祭 / 過疎高齢化地域 / 離島 / まちづくり / 住民意識調査 / 内発的発展 / 持続的な発展 / 現代アート |
研究概要 |
第1に、瀬戸内国際芸術祭の舞台の一つの男木島について詳細に調査して、芸術祭を第1回、第2回と開催するに従って、まちづくりの成果が次第に現れていることを確認した。成果が現れている大きな要因は、男木島の島民性が開放的であることによる。まちづくりの成果として強調すべきことは、子供がいなくなり一旦休校した小中学校が、2014年春から再開した事実である。さらに芸術祭以前と比較して、観光客が日常的に来島するようになり、住民の間でも賑わいが増したことである。 第2に、瀬戸内国際芸術祭は公民の主体の新たなパ―トナーシップの形態を実現したことである。すなわち県や市の行政機関、財団、ボランティア組織の協働であり、その利点と課題を明らかにした。例えば、課題として、行政と民間団体の関係性、民間団体同士の協働の拡大、企画における民間専門家の主導、民間同士の協働における下請け的関係などがあげられる。これらの公民の主体の関係性の課題について分析を行った。 第3に、瀬戸内海の尾道市百島町でもアートプロジェクト(AP)が2012年、2013年に実施された。百島町は人口約500人で過疎高齢化に悩む地域である。APによるまちづくりへの効果を観察するために、2012年のAP実施前と2013年のAP実施後に町民290世帯を対象にして、APに関する意識とまちづくりに関する住民意識調査をアンケート票により実施した。住民はまちづくりのためにAPを歓迎し、何らかの応援をする用意があり、実際に応援も行ってきた。AP実施前と実施後の結果を比較すると、実施前に示した関心より低いものの、実際にAPに参加して作品を鑑賞した住民はアンケート回答者のおよそ半数であると推測された。また鑑賞のために来島する観客に対して、何らかのサービス業を始める住民の関心が生まれていることも判明した。これは本研究が目的とする、APによる住民の内発的な発展の動きであると推測することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
瀬戸内国際芸術祭の舞台となった島を3年間観察してきた結果、少しづつではあるが過疎高齢化地域を再生するまちづくりに貢献してきたことが判明した。例えば休校していた学校がUターンやIターン者の出現により再開している。しかし町の活性化の程度は、異なる島の異なる地域性により差異があることも事実であった。また混雑現象により島の住民の生活に支障をきたしている島も存在する。この混雑現象は2013年の2度目の芸術祭においても解消されていないことが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
瀬戸内国際芸術祭の第1回は7つの島、第2回は12の多くの島に広がっている。そのため調査を十分実施できた島は限られた。それぞれの島の個性が異なるため、一般化することは困難であるが、島の個性と結びつけてアートプロジェクトがまちづくりに貢献するための条件を明らかにしたい。これまでに訪問した芸術祭の舞台になった島におけるまちづくりの効果とそれぞれの島の特性を比較したい。 さらに、瀬戸内海の尾道市百島町のアートプロジェクトによるまちづくりについても観察を続けてゆきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
瀬戸内国際芸術祭の舞台となった広域の島々(調査地域)を訪問するための旅費に使用する予定であったが、芸術祭の地域を訪問調査したのは研究分担者(4人)の全員ではなかったことと、近い調査地への訪問が多かったことが旅費使用の縮小に繋がり、25年度の旅費使用額が当初計画よりも少なくなったことが理由である。芸術祭の地域を訪問しなかったのは統計処理のみを行う分担者であるが、これは仕方ないことと考えている。 調査地域への訪問を増やし、まだ訪問していない地域も訪問し、さらに調査内容を充実ようにしたい。また平成26年度は最終の纏め段階であるため、それに要する費用に使用したい。
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