研究課題/領域番号 |
23530676
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
山本 努 県立広島大学, 経営情報学部, 教授 (60174801)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 過疎 / 農山村 / 地域調査 / 人口減少 |
研究概要 |
過疎の現段階を規定するために、九州、中国の過疎農山村地域を対象に、主に国勢調査を使って人口統計の基礎的分析をおこなった。その結果、2005年(ないし、2010年頃)以降の過疎化の進行は非常に大幅で、ほぼ高度経済成長の時期に匹敵する激しい過疎化が見られることが確認された。この背景には勿論、日本社会全体の人口減少、少子・高齢化があるが、「平成の市町村合併」の影響も(厳密な検証は難しいのだが)大きいように思われる。本研究の対象である、九州、中国の山村地域の人口統計分析では、2005年の市町村合併を境に急激に人口減少率が上昇しているのである。また、全国的にも「平成の市町村合併」がかなり進行した、2005年以降の過疎の加速化は著しく、注目しておくべきである。 このように2005年頃以降に過疎の再加速化が見られるが、過疎の内実の変化も非常に重要である。従来の過疎は、15歳未満人口、15歳以上65歳未満人口において人口の減少が見られたのであり、高齢者人口(65歳以上)人口は増加していた。このため、過疎地域といえば、超高齢社会であり、急速に上昇した高齢化率に注目して「限界集落(高齢化率50%以上)」という問題提起もなされてきた。しかし、2005年以降では、高齢者人口の減少も見られるようになり、ここから、過疎地域人口の全年齢階層での総体的後退が出てきている。これが、2005年(「平成の市町村合併」)以降の過疎の新段階だが、それを本研究では、「高齢者人口減少型過疎」と呼んだ。高齢者人口の減少が過疎の新しい段階のメルクマールなのである。このような知見は従来の過疎農山村研究にはない、新しいものであり、有意義である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は地域の基本情報を入手、分析して、次年度以降の地域調査の基礎を作ることが目標であったが、これについては、一応、充分な達成が出来たと思う。過疎自治体、過疎集落での聞き取りや資料の収集も作業がかなり進み、「研究実績の概要」に示した統計分析の成果も得られ、現地調査の準備が整いつつある。 現地調査ではまずは、調査票を使った調査を予定しているが、調査票の作成も順調に進行中であり、現地でのプレサーベイ(調査地域の町内会長さん(23人)、地区の医師会の方、当該過疎自治体の職員にプレサーベイの対象者になっていただいた)が完了し、調査票の修正、改訂の作業を行いつつある。したがって、調査票は完成にかなり近づいているといえるだろう。 さらには現地で調査実施の説明会を開催し、町内会長、社会福祉協議会などの地域の方々にも調査の協力について好意的なお返事をいただいている。調査の具体的実施(調査票の配布などの具体的やり方など)についても、地元自治体、地元町内会長さんらの了解も得られており、調査受け入れの準備は順調に進んでいるといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
今後、調査票による調査(600世帯の20歳上の住民の悉皆調査、調査地域は広島県の中国山地山村であり、平成の合併で吸収合併となった地域)を予定しているが、この円滑な実施に必要と思われる種々の活動が今後の研究を進めるにあたり、最重要である。そのためには、地域での調査の説明(やお願い)を昨年度に引き続き行うが、調査員のインストラクションなども予定されている。 調査の問題意識としては、前記の「高齢者減少型過疎」という統計分析の知見に対応した、高齢者の生活構造(生活問題)分析がひとつの焦点になってこよう。加えて、地域の中核となることが期待される中若年層の生活構造、地域意識、定住経歴などが調査項目に含まれる見込みである。 ただし、これらの問題にアプローチするには、調査票による大量調査のみでは限界があるので、質的な聞き取り調査(事例調査)を加えたく思っている。 この質的な事例調査は農村の調査モノグラフでよく使われる、世帯単位の生活構造調査を想定している。調査地域のなかでも典型的な集落を選定して、世帯単位の悉皆の聞き取り調査ということになろうかと思う。さらには、地域の種々の団体(町内会、婦人会、高齢者の会、地域おこしにの会など)についての聞き取りなども加わってくる見込みである。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は調査実施の年度であるので、それに関わる研究費の執行が見込まれている。調査(実施や打ち合わせ)のための出張や調査票の作成や調査票の配布、回収に関わる費用などがその主な部分である。この調査には量的な調査票調査もあるが、世帯や地域団体での質的聞き取り調査も含まれている。 さらには、調査データが入手できたら、コンピューターでデータ処理が可能なようにデータの入力を行う必要も出てくる。データ入力完了次第、データを集計、分析するが、これらについては、しかるべき専門家や専門業者からの支援も必要になる可能性もある。また、必要に応じて、統計などのソフトの購入、それを動かすパソコン関連機器の購入などが必要になるかもしれない。 さらには、初年度得られた論文を中心に、その後の調査分析も可能な所から活用しつつ、学会で報告することを見込んでいる。現時点では、西日本社会学会(5月、鹿児島大学)、日本村落研究学会(10月、鳥取大学)での報告が予定されている。今後、さらに可能ならば、追加の学会報告を行いたい。加えて、可能な範囲から調査報告や論文を作成していく計画である。
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