本研究は、「縮小社会」化する地域社会が持続可能な発展を続けるためにはどうあるべきか、そのために必要な社会関係資本をどう蓄積していったらよいか、大都市を事例にして実証的研究を試みたものである。具体的には、札幌市と北九州市をフィールドとし、国際比較研究として韓国・大田広域市を取り上げた。本研究で取り上げた3地区は、大都市の影の部分ともいえる社会的排除地域であった。つまり、日本の2地区は高齢化と人口減少が進み、韓国の1地区は貧困とスラム化が進んでいる地域であった。 そこでは、既存の町内会・自治会も包括した小学校区(北九州市)・中学校区(札幌市)毎の「まちづくり協議会」等が自治体のコミュニティ政策として創られていた。一方、町内会・自治会のない韓国では、「まちづくり」を進めていく中で地域共同体の形成が目指されるとともに、大田広域市では社会的排除地域への「選択と集中」による「虹プロジェクト」と称するコミュニティ政策が特定の地域で進められ、福祉施設を拠点とする「まちづくり」が行われていた。 いかなる地域であっても、地域社会が持続可能な発展を続けてくためには、自治体として何らかの「まちづくり」政策を持って地域住民に働きかけるとともに、地域住民の中からもそれに呼応して、その「まちづくり」を担っていく者が存在しなければ、成り立たない。 比較研究の成果として、大都市においてはどのような規模の「小地域」で、誰が担い手として「まちづくり」を担っていけるかが鍵であり、「小地域」における主体的な担い手形成が、持続可能な地域社会にとっての課題であることが明らかになった。
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