研究概要 |
当該年度の研究は主として台湾の互助慣行について調べ、日本との相違点と類似点を明らかにすることであった。そのため台湾の互助関連の文献を参考にするとともに、台南市近郊の農村、台東県の原住民ブヌン族の山村、花蓮県のアミ族の農村、誼蘭県の漁村、新竹県と桃園県の各農村で聞き取り調査を行い(2013年9月)、また膨湖島と蘭嶼島の原住民ヤミ族、緑島の各漁村でも同様の調査を行った(2014年3月)。その結果日本同様の互助慣行が見られ、頼母子など台湾統治時代における日本からの影響が一部あることもわかった。台湾本島の原住民族や島嶼地域では住民どうしの共同体意識に基づく支え合いが冠婚葬祭などにまだ強く見られる。しかしそれらも生産および生活様式の変化という近代化により衰退しつつある。この直接の研究成果は平成26年度10月刊行の大学紀要にて発表する予定である。 なお前年度の研究成果として、中国の互助関連の文献精読と東北部および上海近郊の各農村での聞き取り調査(2012年9月、2013年3月)から日本のユイと中国の換工、日本の頼母子(無尽)と中国の合会について比較し相違点と類似点を明らかにしたが、その成果は大学紀要『社会学部論叢』にまとめた(2013年10月刊行)。また平成23年度と24年度で調査した日本と韓国、中国の互助ネットワークの比較研究は国際学会報告のために同様の紀要に発表している(2014年3月刊行)。なお本調査期間以前から進めてきたこれまでの日本の互助慣行についての研究をまとめた英文論文が査読付きでアメリカのジャーナル(American Journal of Economics and Sociology)に掲載された(Volume72, Issue3, July 2013, pp.531–564)。
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