研究課題/領域番号 |
23530681
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
伊藤 美登里 大妻女子大学, 人間関係学部, 教授 (10406845)
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
「個人化社会における社会的包摂の研究」と題する本研究の2年目にあたる平成24年度は、調査地(ドイツ連邦共和国ミュンヘン市)での調査や資料収集にとくに力を注いだ。具体的には、3度にわたりドイツミュンヘン市に赴き、資料収集、インタビュー調査、専門家からの専門的知識の提供を受けた。資料は、ドイツ全体およびミュンヘン市について、社会活動およびワークフェア政策に関する行政資料および調査報告書を収集し、分析した(現在も分析中である)。インタビュー調査では、ボランティア団体で実際に活動する人へのインタビュー、市民労働への従事者へのインタビュー、市民労働を組織する行政・企業の担当者へのインタビューを行なった。さらにミュンヘン市で市民活動の促進に関与してきたG.ムッツ教授を訪問し専門的知識の提供を受けた。得られた知見は以下の通り。まず、ベックの市民労働のアイデアは、後に、市民活動と(ワークフェアとしての)市民労働とに分かれてしまった。次に、市民労働は、現在、連邦政府のワークフェア政策のモデルプロジェクトとして一定の成果をあげている(再就職を果たした者もかなり存在する)が、かなりの補助金が投入されており、実際の政策として導入が可能かどうかは今後の行方を見守る必要があることがわかった。市民活動の参加者のインタビューから、ミュンヘンでは市民活動がかなり浸透しており、市民にとって何か特別というよりはごく普通の活動になっていることがわかった。どちらの活動も日本での社会的包摂を考える上で参考になる事例であると思われる。このように、24年度はおおむね研究実施計画通りに研究が進展した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は調査研究の二年目に該当する。二年目には、一年目に未着手であった市民労働や市民活動への実際の参加者と接触しインタビューすることにも成功した。また、市民労働や市民参加の大まかな仕組みも、資料収集や当事者へのインタビューや研究者からの専門的知識の提供により捕らえることができた。これらは、研究計画を立てた当初に二年目に達成すべき目標であった。また、国内で研究成果の学会発表も行なった。引きこもりについて研究している研究者が関心を示してくれ、ドイツの事例が日本にも参考になるという確信をもつこともできた。したがって、研究の目的はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は研究の最終年度になる。したがって、一年目と二年目に収集した文書資料およびインタビュー資料を分析し、不足分を25年度のドイツでの調査で収集する。また、研究成果を論文としてまとめ、査読つきの学会誌に投稿する予定である。あわせて、ドイツ側の調査協力者に研究成果を提示するため、論文は英語でも執筆する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の主な使用予定は、消耗品費が13万円、旅費が70万円、その他が37万円である。 その詳細は、以下の通り。「消耗品」の内訳は書籍購入など、「旅費」の内訳はドイツへの調査出張旅費(2回)として(35万円×2)、「その他」の内訳は、英語論文のネイティブチェック代(業者委託)として30万円、およびインタビューのテープ起こし代として7万円の予定である。
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