本研究の目的は、ドイツの社会学者U.ベックが90年代後半に提唱した市民労働という政策理念が実際にどのように機能しているかを探ることであった。調査地はバイエルン州ミュンヘン市とした。調査の結果、以下のことが判明した。市民労働の政策理念を構成する諸要素は、それが政策的実践に移される過程で、ワークフェア政策とボランティア政策とに二分され採り入れられた。その結果、ワークフェア政策およびボランティア政策としては、それぞれ一定の成果をあげているが、自発的参加により市民労働への参加者に生存保障と社会的アイデンティティを附与するという、市民労働の政策理念の本来の重要な目論みは、現在のところ果たされていない。
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