従来どおりイタリアにおいて就労している日本人コックからの聞き取りを実施した。9月にイタリアに渡航し、平成25年度はこれまでに対象としてこなかった地域の長期就業者、独立開業経験者、女性を対象に聞き取りを実施した。3年間のイタリアおよび日本でのインタビューをつうじて、現地における日本人コックの就労の全体像を把握することができた。日本人コックに対する需要は以前として強く信頼できる戦力としての評価も高いものの、この数年イタリアのレストラン産業は不景気に見舞われ、10年程度の長期にわたり現地で就労してきた日本人のシェフ層も帰国を検討するか、すでに帰国をするようになっている。一方で、現地で開業をした日本人の経営状況は決して恵まれたものとはいえず、早期撤退のリスクも高い状況である。総じて言えば、とりわけ北部イタリアにおいてゲストワーカーとして就労する日本人は多いものの、その将来的な職業キャリア上の達成は現地および日本ではかつてよりも困難となっている。また日本人コックたちは、イタリアにおける地域性・郷土料理の真正性を極めようとする嗜好はかつてよりも高まりつつあるようにみえる。そのために長期滞在をのぞむ若いコックは多いが、外国人労働者受入の規制が強まるイタリアで長期滞在をすることも次第に困難となりつつある。最後に日本人コックたちの日伊にわたるネットワーク上の交流はきわめて密なものであるが、公的な協会や団体が果たす役割は限定的なものであり、個人間での交流が強い傾向にある。
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