1980年代の「外国人」政策においては、「外国人」と「ドイツ人」との文化的差異を自明視しながら、「外国人の制限」や「多文化社会」が議論されていたい。これをこの研究では「文化的差異のディスコース」と呼ぶ。それに対し国籍法が改定され、移民法が制定された2000年代には、「移民の統合」が問題にされるとともに、ドイツ人が共有すべきリベラルな価値規範の尊重やドイツ語の習得が求められるようになった。 2010年のザラツィン論争に見られるように、移民の統合への圧力は高まっている。それは「統合の意志」を持たないとされたイスラム系移民に対する排外感情をもった右翼ポピュリズムの台頭にも繋がっている。
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