研究課題/領域番号 |
23530693
|
研究機関 | 静岡文化芸術大学 |
研究代表者 |
舩戸 修一 静岡文化芸術大学, 人文・社会学部, 講師 (00466814)
|
研究分担者 |
西城戸 誠 法政大学, 人間環境学部, 准教授 (00333584)
図司 直也 法政大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60442563)
黒田 暁 立教大学, 社会学部, 助教 (60570372)
|
キーワード | 都市農業 / 持続可能性 / 援農ボランティア / 市民農業 |
研究概要 |
当該年度では、都市、とりわけ東京における「援農ボランティア」――市民(非農家)が農家の農作業を補助支援する活動――の事例から都市農業における市民協働・市民参画の現況と課題を明らかにした。昨今、東京では、都市農業者の高齢化に伴う人手不足の支援として「援農ボランティア」の活動が盛んである。 そこで当該年度では、東京都日野市と町田市の「援農ボランティア」をとりあげ、これに参加している農家と市民に聞き取り調査を実施した。その結果、規模の大きい販売農家は援農ボランティアを有効な労働力として活用していることが分かった。一方、規模の小さい販売農家では後継者もおらず、自分の代で農業をやめてしまう農家もおり、必ずしも援農活動が地元農家の経営安定に寄与していないことも分かった。しかし、農作業を通した市民交流が農家側の農業への生きがいになり、日々農作業へ励む動機につながっていることも明らかになった。また援農ボランティア側も趣味的な農業体験から本格的な農業労働を望む人がいるなど、その参加動機は多様であることも分かった。 確かに、都市農業における市民協働・市民参画は農家にとって労働力の補充になり得る。しかし、必ずしもそれが都市農家の経営的安定までには至っていないことも事実である。また農家側も援農ボランティア側も、この活動に対する目的や期待は様々である。よって、今後は両者のニーズを有効につなげるマッチング方法が必要である。さらに市民協働・市民参画による都市農業の振興・活性化を企図するならば、援農活動の領域を「農作業=生産」に限定するのではなく、受け入れ農家の農産物の「流通」や「販売」まで拡大して考えることも求められる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで日野市と町田市の援農ボランティアの調査を通じて都市における土地(農地)利用のあり方や現況、農業者の営農環境や経営状況ならびに土地(農地)利用に対する意識や行動が明らかになった。と同時に、都市農業に参加する市民(非農家)の動機や意識が明らかになった。このような研究内容は、もともと本研究の二年目の計画段階で想定していたものであり、本研究の基盤的知見を形成するものである。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、まず日野市や町田市以外の東京都内の都市農業における援農ボランティアの取り組みについて調査する予定である。現在、上記の2市以外にも、積極的に援農ボランティアに取り組んでいる東京の市町村は数多く見られる。そこで、こうした援農ボランティアの実践例も調査し、上記の2市との比較研究を行う。 次に、都市における福祉農園の取り組みについて調査する予定である。現在、農業による障害者支援や失業者支援が東京都内で見られる。こうした実践例も都市農業の可能性を広げる取り組みであるとして研究を行いたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
上記のフィールドワークを遂行するためには、勤務地(浜松市)から調査地(東京)に向かう交通費が必要である。よって研究費の使用内訳としては交通費を主に計上した。
|