研究課題/領域番号 |
23530693
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研究機関 | 静岡文化芸術大学 |
研究代表者 |
舩戸 修一 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 講師 (00466814)
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研究分担者 |
西城戸 誠 法政大学, 人間環境学部, 教授 (00333584)
図司 直也 法政大学, 現代福祉学部, 准教授 (60442563)
黒田 暁 長崎大学, 環境科学部, 准教授 (60570372)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 都市農業 / 持続可能性 / 援農ボランティア / 市民協働 |
研究実績の概要 |
戦後、首都圏における農業は、高度経済成長期から人口増加に伴う宅地造成によって縮小を余儀なくされた。さらに「都市計画法」によって「市街化区域」に指定された都市農家は農地を手放さざるを得ず、離農していった。こうして首都圏では農業従事者が大幅に減少し、「非農家」が占めるようになったのである。しかし、都市農業が縮小する一方で、非農家である市民の間では農業へ憧れや関心が高まっている。とりわけ東京都では、農業現場における市民協働の取り組みとして「援農ボランティア」や「市民農園」が盛んになりつつある。このように非農家にとって「農業・農村」の価値が高まるならば、都市住民がどのように「農業・農村」を捉えるのかを考察することは、今後の都市農業についての研究にとって有意義であると思われる。そこで当該年度は、前年度に引き続き、NHKの農事番組である『明るい農村(村の記録)』(1971年~1980年の放送分)をとりあげ、それを制作したNHKの元・ディレクターへの聞き取り調査を行った。そもそも戦後の農業・農村が近代化していく様子を伝える農事番組が1970年代から農政の矛盾を指摘する内容に変質し、さらに1980年前後からは都市の消費者や非農家に関心のある「食」の番組になるなど、戦後日本の農業・農村をめぐる状況変化とともに、農事番組自体も変質せざるを得なかったことを明らかにした。以上のようにメディア(テレビ)における「農業・農村」の描かれ方を明らかにし、都市住民や非農家にとっての「農業・農村」の意味を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までは、「援農ボランティア」に参加する市民やそれを受け入れる都市農家についての「聞き取り調査」を行い、その取り組みの意義だけでなく、課題や問題点も明らかにすることができたため。また、NHKの農事番組制作者への聞き取りも行い、非農家や都市住民にとっての「農業・農村」の意味についての考察も深めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までは、「援農ボランティア」に参加する市民、ならびにそれを受け入れる農家についての「聞き取り調査」を行ってきた。今年度は、市民農園を利用する都市住民へのアンケート調査を実施し、その取り組みに参加する市民の考えや意識を幅広く拾いあげることによって、農業現場における市民参画の制度構築に貢献したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで首都圏の援農ボランティアについての聞き取り調査を行ってきたが、当初、予定していたよりも調査対象者が多かったため時間がかかり、計画していた東京都の「市民農園」についての聞き取り調査ならびにアンケート調査まで実施できなかった。というのも、共同研究者である西城戸誠が今年度、サバティカル休暇による海外滞在のため、調査に参加できず、その分、予定していた調査を消化することができなかったからである。
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次年度使用額の使用計画 |
まずは首都圏(とりわけ東京都)の「市民農園」を開設する農業者やそれを利用する市民への聞き取り調査を実施する。そして、その調査結果を踏まえ、農業者や利用者に対するアンケート調査を実施する。さらに共同研究者の西城戸誠が3月に帰国するため、今年度予定していた「市民農園」についての調査研究を進めることができる。未使用額は、交通費、聞き取り・アンケート調査への協力者に対する謝金などに使用する予定である。
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