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2012 年度 実施状況報告書

ヨーロッパ辺境地域における地域文化の越境性と境界性

研究課題

研究課題/領域番号 23530696
研究機関恵泉女学園大学

研究代表者

定松 文  恵泉女学園大学, 人間社会学部, 教授 (40282892)

研究分担者 小森 宏美  早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (50353454)
百瀬 亮司  大阪大学, 世界言語研究センター, 助教 (00506389)
キーワード地域文化 / ヨーロッパ / 空間論 / 辺境性 / 越境性 / ラトヴィア / スロヴェニア / コルシカ
研究概要

2011年度の現地調査のまとめと2012年度の研究・現地調査のための研究会(6月16日)。他の時代と地域の事例からヨーロッパ辺境地域における地域文化の知見を深めるため、第2回目の研究会は以下知識を提供していただいた。「モロッコとヨーロッパの関係-境界線に息づくイスラーム史の観点から-」(佐藤健太郎・北海道大学大学院文学研究科・准教授)、「EUの東の境界の内と外にいるルーマニア人 ―ルーマニアとモルドヴァ共和国の歴史と現状―」(中島 崇文・学習院女子大学 国際文化交流学部・准教授)。
2011年度現地調査を行った旧ソビエト連邦のバルト地域ラトビアとの比較を行うために、同じく1989年まで旧社会主義圏にあった旧ユーゴスラビアの国家のうち既にEUへ加盟したスロヴェニアといまだに加盟を果たせていないマケドニアについて資料収集と現地の知識人や関係者に現地調査を行った。
旧ユーゴスラビアは社会主義でありながら旧ソビエトとは政策を異にしており、1970年代から「西側諸国」との交流は生活水準においても物流といった経済的水準においてもつながりがあったため、社会主義時代を完全に否定した形で現在の街や文化を構築しているわけではなく、かつオーストリアを主とした中欧との歴史的つながりのなかで経済圏、文化圏を再構築し、ヨーロッパとの親和性を探求し、再構築を図ろうとしていることがうかがえた。スロヴェニアの主要な産業はEU統合とともに競争の激化でかなり衰退しているが、石油や小売りの流通等自国資本の産業を堅持し、観光産業とともに現在空間のスペクタクル化と歴史の再構築に「成功」している表象の空間と空間の表象が確認された。一方のマケドニアはオフリド合意の多文化主義政策によって、教育の多文化維持が逆に社会としてのマケドニア統合を妨げており、多文化主義の導入ためには社会的基盤条件が必要であることが確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2回の研究会において、理論枠組みと概念に関する共通理解がほぼ達成され、他地域や異なる時代のヨーロッパの境界について知識を得ることができ、ヨーロッパの地域文化の境界線の形成に時代ごとの政治的・経済的覇権が大きく関与することが確認された。
また、空間論の実証研究として、2011年度のラトヴィアにおける調査による知見を、スロヴェニアとまだEUに加盟していないマケドニアでさらに深めることができた。特に、スロヴェニアとイタリア国境の歴史的変遷およびEU以外のマケドニアで調査できたことは当初の目標よりさらに研究の深度を深めることになった。

今後の研究の推進方策

過去2年間の現地調査をふまえ、検証的に別の地域を現地調査するとともに、最終年度として日本語と英語で成果報告を試みる。
1)研究会 6月に1回今年度の現地調査および成果の公表の仕方について研究会を行い、余裕があれば他の地域の研究者からも知識を提供してもらう研究会を行う。
2)現地調査 ラトヴィア、スロヴェニア、マケドニアとの比較をEC時代から「ヨーロッパ域内」にあったコルシカとサルディーニャでの現地調査を2月に行う。地域文化活動家、知識人へのインタビューと空間的実践、空間の表象、表象の空間という視点から現地視察と聞き取り調査を実施する。2名以上の研究者との合同調査を試みるため、調査時期が2,3月にしか組めない。
3)成果報告 日本語での論文発表とWEB上での英語論文で公表を試みる。①表象の空間として、ラトヴィア、スロヴェニア、マケドニア、コルシカにおいて、観光や文化行為をどのように空間的実践し、消費対象としているか。②空間的実践として、旧社会主義圏の地域でヨーロッパ的なものを見出し、EUとの境界をどのようになくしていったのか。③空間的実践として、地中海、バルト海、アドリア海といった海という環境はどのような機能を持つのか、イメージとして自由に飛び越える再構造化された文化実践が可能になっているのか。またそれらの文化実践の行為主体の階層、ジェンダー、エスニシティ/ナショナリティに注目し、漠然とした一体化した地域ではなく、分裂しつつも絡み合い重なり合う地域社会を再考する。

次年度の研究費の使用計画

調査のための旅費や研究会での謝金以外に、最終年度の成果報告でWEB上での英語論文発表を試みるため、英語論文のチェックをするための費用を必要とする。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012

すべて 図書 (4件)

  • [図書] エストニアを知るための59章2012

    • 著者名/発表者名
      小森宏美
    • 総ページ数
      362
    • 出版者
      明石書店
  • [図書] ユーラシア世界 第5巻 国家と国際関係2012

    • 著者名/発表者名
      塩川伸明
    • 総ページ数
      95-117
    • 出版者
      東京大学出版会
  • [図書] 冷戦後のNATO-“ハイブリッド同盟”への挑戦2012

    • 著者名/発表者名
      広瀬佳一
    • 総ページ数
      149-165
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
  • [図書] 地域紛争の構図2012

    • 著者名/発表者名
      月村太郎
    • 総ページ数
      213-235
    • 出版者
      東洋書房

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公開日: 2014-07-24  

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