研究課題/領域番号 |
23530700
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
小倉 祥子 椙山女学園大学, 人間関係学部, 准教授 (60383189)
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研究分担者 |
吉田 あけみ 椙山女学園大学, 人間関係学部, 教授 (90330670)
鈴木 奈穂美 専修大学, 経済学部, 准教授 (10386302)
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キーワード | WLB / 企業規模 / 地域 / 中小企業 / 労働時間 |
研究概要 |
本研究は、わが国におけるワーク・ライフ・バランス(以下WLB)施策に関する取組について、“地域(大都市と地方)”と“企業規模(大企業と中小企業)”とに焦点をあてて、特に地方の中小企業における先駆的な事例をロールモデルとして取り上げ、社会全体で労働者が主体的に働き、生き方を選択できるようなWLB社会の実現を可能にできるような政策提言を行うことである。 平成24年度の主たる研究計画は、昨年度の先行研究や地域分析結果より選定した国内のWLBの実現に取り組んでいる企業への聞き取り調査であった。そこで本年度は平成24年8月~平成25年1月にかけて、産業別労働組合組織および企業への聞き取り調査(大都市×中小企業、大都市×大企業、地方×中小企業)を実施した。 具体的な調査対象企業は、通建連合(労働組合)、島根県松江市の株式会社長岡塗装(地方×中小企業)、社会福祉法人若草福祉会・障害福祉サービス事業所若草園/障害者支援施設美野園(地方×中小企業)、大阪府大阪市の三元ラセン管工業株式会社(大都市×中小企業)、東京都(本社大阪府)の株式会社高島屋(大都市×大企業)である。 平成24年度の聞き取り調査により、大企業では多種多様なWLB支援施策を導入しており、従業員はそれぞれが必要な施策を選択できるようになっていた。一方中小企業においては、地域が大都市であっても地方都市であっても、人材確保のために従業員のニーズに合わせて柔軟にWLB施策を取り入れていることが分かった。したがって従業員の年齢構成や家族構成など、個別対応が可能な家族的な制度を導入しており、こうした点は多くの従業員を抱える大企業には模倣することが難しい点であり、規模が小さいからこその利点と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間の初年度には、先行研究の研究や、都道府県別の社会統計データを利用し、どのような地域において調査対象先を選定すべきかの検討を行った。それを受けて、本年度では、島根と大阪に焦点をあて、労働組合を含む5事業所に聞き取り調査を実施することが出来た。 また、WLBを実現可能にする長時間労働の一つの解決方法として残業の削減を目指している労働組合と事業所調査を通じ、適正な労働時間を確保するための一定の社会的共通ルールが必要であるとの認識を新たにした。 平成24年度の研究により、一定の成果と次年度への新たな課題を発見し、次年度の研究へとつなげることが出来、有意義な研究成果を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究成果として、WLBを実現可能にする長時間労働の一つの解決方法として残業の削減を目指している労働組合と事業所調査を通じ、適正な労働時間を確保するための一定の社会的共通ルールが必要であるとの認識を新たにした。 そこで平成25年度には、EUの労働時間規制について、EU加盟国のうちスウェーデンのような典型的な福祉国家とは一線を画す、かつ国際競争力の高いフィンランドに着目し、労働時間規制があることで、日本における長時間労働の典型であるマスコミ業界において、どのように生活時間を確保し、WLB社会を実現可能にしているのか、労働組合の産業別組織(ジャーナリストユニオン)、経営者団体(フィンメディア)、企業(アルマメディア)の3事業体に聞き取り調査を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費の使用計画は、①研究会開催費用(研究者の交通費など)、②海外調査の渡航費(研究者の交通費など)、③海外調査における現地のコーディネート会社への費用(アレンジ、日程調整、通訳費用など)、④その他(書籍購入費用、勉強会講師謝礼、消耗品など)である。
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