①文献補足調査:韓国では、ホスピス事業及びがん対策事業、生命倫理問題(終末期医療、尊厳死等)への対策などの展開と成果を理解できる資料を収集した(韓国現地の図書館及びホスピス事業担当者などに依頼)。また、医療社会学、老年学、死生学、社会福祉学の領域の文献に目配りし、関連する文献を各種データベースで検索し、複写・購入した。日本では、緩和ケア病棟の入院料が診療報酬として設定されるまでの議論の流れが確認できる資料を関連図書館にて収集した。その他、緩和ケア、医療制度・政策、死の社会学に関連する文献を収集した。 ②ヒアリング調査の実施:(1)日韓のホスピス・緩和ケア関係者に対するヒアリング調査を実施した。主な質問項目は、ホスピス・緩和ケアにかかわるようになった動機や経緯、現在の仕事内容、制度化のプロセスと内容についての事実確認と意見、制度化の前後でのホスピス・緩和ケアの変容(または予測される変容)、制度化の長所と短所、今後の制度の方向性、今後の緩和ケアの望ましい形態、などである。本年度のヒアリング対象者は緩和ケア・緩和医療を実践する医師とした。 ③研究の最新動向の把握:日本緩和医療学会学術大会、仏教看護・ビハーラ学会、福祉社会学会等の学会に参加し、研究の最新動向の把握に努めた。 ④日韓でのヒアリング調査によって、いずれの社会においても医療化の影響の大きさが確認された。しかし、その内実は異なる。技術の進歩による医療化の影響、医療産業の巨大化による医療化の影響、医療政策の要求による医療化の影響、これらが複合的に日韓でのホスピス・緩和ケアの現実と構想に作用している。具体的な調査データの比較によって、日韓の相違や制度化と医療化の関係性などの分析を目指したい。
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