研究課題/領域番号 |
23530705
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
リム ボン 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (10202409)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ハーレム / 協和町 / 草津市 / 東京都台東区 |
研究概要 |
本研究ではグローバルな動向の中で同和対策事業以降の日本の被差別部落の新たなる可能性を分析する。同和対策事業の根拠となってきた「地域改善対策特定事業に係わる国の財政上の特別措置に関する法律」(略称:地対財法)が2001年度を最後に失効した。これを機に、多くの自治体において、同和対策事業を一般事業へと転換させる必要性が唱えられている。確かに、時代の趨勢から見ればこれは必然的な方向性ではある。しかし、このことが同和対策事業の完全否定・完全撤退という短絡的な結論には結びつかない。なぜなら、たとえ法は失効しても同和地区もしくは被差別部落と呼ばれた地域空間は今後も存続し、課題も多く残されているからだ。重要なことは、これまでの同和対策事業で培ってきた事業実績とそのノウハウを、より普遍的な事業手法へと昇華させることである。その可能性は充分存在している。たとえば、日本の行政システムがとかく縦割りの弊害に陥っていることが指摘されてきた中で、同和対策事業に限っては、縦割り行政を超えた部局横断的な行政サービスが実施されてきた。「環境の改善」「教育の充実」「職業安定対策」「生活相談」「市民啓発」といった課題が総合的かつ部局横断的に取り扱われてきたのである。これは今日的視点から見ても先進的な事業手法であったし、その経験は、一部修正を加えさえすれば、一般事業の中でも充分活かすことのできる普遍性を備えている。まさに、20世紀後半の日本の都市政策の中で最も優れた事業手法の一つとして位置付けることができるのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究成果は以下の3点です。(1)堺市における旧同和地区における実態調査を実施しつつ当該地区に立地しているM総合病院の建て替えプロジェクトにマスターアーキテクトとして参画した。そこでは、部落差別の歴史とまちづくりの取り組みを総括し、新たな病院建築にマイノリティコミュニティのミュージアム機能を充実させることを計画している。(2)草津市における隣保館のあり方に関する審議会に参加し、草津における被差別部落の実態と社会資本の活用のあり方を提言し、密室談合型政策決定と既得権益の乱用を阻止する政策を実現させた。(3)東京都台東区を中心とするエリアでホームレスの生活実態とその支援活動の在り方についての現地視察を実施し、アファーマティブ・アクションと都市計画の在り方について考察した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)海外で実施されてきたアファーマティブ・アクションの到達点についての資料文献研究を実施する。(2)東京都台東区および堺市協和町における参与観察を継続実施する。(3)ニューヨーク・ハーレムにおけるコミュニティ・エンパワーメト・ゾーン・プロジェクトの到達点を明らかにするための現地調査を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度予算のうち781,073円を次年度に繰り越した理由は、東日本大震災によって日本のアファーマティブ・アクションのあり方が再考を求められることが必至となることが予測されることから、理論の再構築と国内調査を優先し、海外調査を一年先送りすることとしたからである。平成24年は研究費の使用計画は次の如くである。(1)国内調査および海外調査のための旅費。(2)現地調査のための設備備品の調達。(3)アファーマティブ・アクション関係の図書の購入。(4)研究成果報告を出版するに当たっての編集作業補助謝金。(5)文具、消耗品等。
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