研究課題/領域番号 |
23530705
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
リム ボン 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (10202409)
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キーワード | affirmative action / New York / Homeless / 被差別部落 / 都市再生 |
研究概要 |
本研究は、平成23年度から25年度の3ヵ年の間に、先進事例である米国ニューヨークでのマイノリティ政策の実践例と対比しつつ、日本において同和対策事業が適用されてきた被差別部落を、運動団体との癒着による行政依存体質から脱却させ、当該地区に蓄積されてきた社会資本を都市再生のための貴重な資源として積極的に活用することを前提としたコミュニティ・エンパワーメント政策のあり方を理論的かつ実践的に解明することを目的として実施している。特に、アファーマティブ・アクションの検証にあたっては、Thomas Sowellの”Affirmative Action Around the World”を基礎資料とし、米国の先進事例はもとより、インド、マレーシア、ナイジェリアなどにおける都市貧困対策の到達点と問題点を分析し、日本における新たなる都市貧困対策をグローバルに位置付けつつ、日本独自の方向性を描き出す。そこで、平成24年度は23年度の調査研究活動を継承しつつ、以下の7点の調査分析を実施した。(1)東京都台東区山谷地区における労働者ならびにホームレスの生活実態に関する参与観察を計11回にわたって実施した。(2)福岡市における同和対策事業と千代団地に関する実態調査を計2回実施した。(3)宮城県における震災復興の実態に関する現地観察調査を実施した。(4)広島市基町地区における原爆スラム跡再開発団地の現状視察を実施した。(5)大阪府堺市における同和地区(協和町)における住民参加型医療機関建設に関する参与観察を計25回にわたり実施した。(6)草津市における隣保館の活用の在り方に関する委員会に出席し、アファーマティブアクション以降の活用の在り方を提言した。(7)京都市崇仁地区における再整備の在り方を住民リーダーから聞き取り調査を実施した。その後京都市は当該地区に市立芸術大学を移転することを決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画にもとづく研究実績(上述)で示すように、文献解読、現地調査のいずれも当初目標に沿って達成することができている。海外調査(ニューヨーク)については、当初は平成24年度に実施することを計画していたが、万全を期して、国内調査を充実させ、平成25年度に実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後のテーマは、「パートナーシップと事業推進の仕組みの検証」である。(1)地域住民、行政、企業、NPO等が連携することでパートナーシップ型のまちづくりを成功させて、衰退地区を劇的に再生させている事例としてニューヨークのNPO法人:コモングラウンド・コミュニティを挙げることができる。平成25年度の夏に2週間、ニューヨークに滞在し、コモングラウンド・コミュニティの創設者でありプレジデントでもあるロザンヌ・ハガティ氏へのインタビュー調査を実施し、パートナーシップ型まちづくりを推進する機構の仕組みを明らかにする。同時に、コモングラウンド・コミュニティの活動に参加し、参与観察による事業検証を実施する。(2)崇仁地区においては、旧来の住宅地区改良事業の限界を見極め、土地区画整理事業等の事業を合併成功することの可能性を検証する。さらに、民間事業者、行政、地元コミュニティとの協同組織としてのコミュニティ・ディベロップメント・コーポレーションの組織イメージを明らかにし、事業モデルを作成する。たとえば、廃校となった崇仁小学校を活用し、昼間人口を誘引する施策の考え方と事業モデルを提案する。(3)必要に応じて、平成23年度から24年度に実施した調査の追加調査も実施する。(4)研究成果に関する最終報告書を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
東京、ニューヨークを中心とした調査旅費、パソコン関連消耗品、取材用カメラ等の機材購入などのために研究費を使用する予定である。
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