研究課題/領域番号 |
23530706
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
宮本 直美 立命館大学, 文学部, 准教授 (40401161)
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キーワード | 音楽社会学 / キャノン / 文化社会学 |
研究概要 |
平成24年度は9月末まで引き続きイギリスのケンブリッジ大学音楽学部にて調査・研究を進めた。同大学図書館と大英図書館の資料を用いて、19世紀のコンサート活動について情報収集と分析を行った。19世紀に一般的になった「コンサート」と一口に言っても、そこには様々なジャンル・プログラム・聴衆階層・会場のものがあり、それらを総称として「コンサート」と呼ぶことはできても、当時の音楽活動と社会との関係を考察するにはそれぞれの違いを意識する必要がある。特に社会階層との結びつきは重要であり、当時のコンサート「分化」のあり方が、現在のクラシック音楽コンサートのあり方にも強く影響を与えている。ことにそれはイギリスの状況を見ると顕著であり、19世紀に始まった「プロムナード・コンサート」は現在の姿を見ても、開始当初の精神を伺い知ることができる。こうしたコンサートの多様性を精査することは、本研究の目的でもある芸術の「宗教性」(宗教的雰囲気)の形成にも大きく関わる。 そうした調査と並行して、芸術の宗教性と公共性に関わる論考を英語論文としてまとめ、International Review of Aesthetics and Sociology of Music に受理された(出版準備中)。 また、年度後半には改めて、Philharmonic Society of Londonという19世紀のオーケストラ団体の演奏活動についての調査も加え、ヨーロッパ文化におけるコンサートの社会的意義についての考察を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はドイツだけではなくイギリス、フランスの状況も含めての19世紀コンサート活動を考察するものであり、各国の当時の雑誌記事などを主な資料としている。そうした中で社会学的な考察として求められるのは単に事実の確認ではなく、コンサートが宗教的オーラを持つ一方で娯楽性、商業性、そして劇場性あるいはパフォーマンス性を持つという視点である。派生的にパフォーマンスの問題についても研究を進めており、平成24年9月には、オーストリアで開催されたヨーロッパ芸術社会学連絡会議での口頭発表を行い、欧米の専門家との意見交換を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度にもオーストリアで開催される「音楽とジェンダー」の国際学会で口頭発表する予定である(受理決定済み)。19世紀のコンサート活動については、当時の雑誌記事から小さな報告を集めることが引き続き不可欠なため、補完的な資料収集を行いつつ、音楽芸術の公共性の問題についてまとめる準備を行う。本研究に必要な視点として演劇性の問題も出てきたため、日本演劇学会でも口頭発表を行う(受理決定済み)。
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次年度の研究費の使用計画 |
10月にはオーストリアでの国際学会発表が決定しており、そのための出張旅費が必要になる。また、現地資料の収集や詳細の確認、また英語論文作成にあたっての専門家との議論の必要性から、ドイツまたはイギリスへの出張を予定している。 その他、複数回にわたる英文校閲の支出、関連書籍、消耗品の購入を予定している。
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