研究課題/領域番号 |
23530710
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
吉岡 至 関西大学, 社会学部, 教授 (20248793)
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研究分担者 |
黒田 勇 関西大学, 社会学部, 教授 (90186544)
富田 英典 関西大学, 社会学部, 教授 (50221437)
深井 麗雄 関西大学, 政策創造学部, 教授 (80454594)
森津 千尋 宮崎公立大学, 人文学部, 助教 (00510207)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 地域社会 / 情報環境 / コミュニケーション / メディア |
研究概要 |
本研究は、主として社会学や政治学の視点から、地域社会の情報環境の変容が地域住民の参加意識、地域社会の活性化、および地方自治の主体形成にどのような影響をもたらしつつあるのかを明らかにしていくことを目的としている。 より具体的には、既存のマス・メディアである地方新聞や地域放送局が地域住民の文化、経済、政治などの諸活動に対して果たしてきた役割と、新たな情報メディアであるインターネットやモバイルメディアの普及にともなう既存メディアの役割の変化を検討し、ネットワーク化・グローバル化が進展するなかでの、地域住民にとっての地域メディアの位置づけと、地域社会に必要とされる情報環境の整備のあり方を提示していくことである。 初年度にあたる平成23年度は、おもに地域メディアの活動実態を把握するための調査を中心に研究を進めた。具体的には、沖縄の地方新聞である『琉球新報』と『沖縄タイムス』のローカルジャーナリズムとしての位置づけ、離島の宮古島市(沖縄県)における地元メディア『宮古毎日新聞』や『宮古テレビ』などの役割、東日本大震災後の被災地でのコミュニティFMや臨時災害放送局の活動実態、宮崎県の観光とメディアとの関係性など、いくつかの地域のメディアを対象に検討を行った。また、情報環境の変化については、地域社会における民間放送局の歴史と現状や、モバイルメディアがもたらす時間と空間の感覚の変容などを検討した。 これらの作業は、地方や地域を再生し、活気のあるコミュニティを作り上げる地域メディアの役割を検討し、これからの地域社会と地域メディアの相互作用の在り方に関する研究にとって必要とされるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、地域の情報環境の実態と地域メディアの役割を検討するために、(1)先行研究・文献調査、(2)現地視察・聞き取り調査、(3)メッセージ内容の分析、(4)メディア利用の調査などを実施する予定にしている。 上記のうち、初年度平成23年度に予定していた、(1)「地域社会」と「メディア」に関する先行研究・文献調査、(2)東北地区や九州・沖縄地区を中心とした現地視察・聞き取り調査、(3)メディアのメッセージ内容の分析などについては、一部で所期の目的を達成できた。 これらの調査を通して、まだ特定の地域やメディアに限定されてはいるが、住民に必要な地域情報がどのように提供されているか、また、地域メディアが地元の政治・経済・文化とどうかかわっているのか、について一定の考察を加えることができた。 なお、(4)メディア利用の調査については次年度に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究全体の統括は研究代表者(吉岡至)が行うが、地域社会の現状把握、地域メディアの役割、地域メディアの内容分析、メディア利用調査などの個々の調査研究は、それぞれの専門性を活かし、研究分担者(黒田勇、富田英典、深井麗雄、森津千尋)と研究協力者(市村元:関西大学客員教授、「地方の時代」映像祭プロデューサー)が引き続き共同で実施する。 今後は、平成23年度に得られた成果をふまえ、さらに関連する調査などを継続し、「情報環境の整備とメディアの役割」に関する中間報告を行う研究会を開催する予定である。また、地域メディアのメッセージ内容の分析やメディア利用の質問紙調査やインタビュー調査を実施し、地域メディアの位置づけや地域住民の意識などを検討する。 メディア利用調査においては、地域に協力を依頼し、それぞれの地域性を考慮し、地域ごとに対象者の抽出や調査項目の設定をしていかなければならない側面がある。調査の実施にあたっては、これらの調整が必要になってくるが、質問紙調査における「共通項目」と「個別項目」の設定や、利用者・有識者へのインタビュー調査などで対応していきたいと考えている。 さらに、韓国・釜山を対象国・地域として、地域放送局の活動が地域住民のアイデンティティ形成に与える影響についても調査を行う予定である。 最終的には、地域の情報環境整備の方向性を示すモデル構築に向けて、各研究者の研究成果をとりまとめた報告書を作成し、本研究全体の成果を発表するシンポジウムの開催を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
以下の調査研究を実施するために研究費を使用する予定である。 まず、次年度平成24年度においても、地域の情報環境の実態と地域メディアの役割を検討するために、さらに(1)文献調査、(2)訪問調査、(3)メッセージ内容の分析などを継続していく。また、次年度においては、(3)メッセージ内容の分析と並行して、(4)メディア利用調査を実施し、メディアからの地域情報の提供と地域住民の地域情報の利用の関係を検討していく。 なお、今年度平成23年度は文献収集や国内外の訪問調査の一部を、次年度平成24年度に予定しているメッセージの内容分析やメディアの利用調査と連動させて実施していくことが有効であると判断したため、未使用の研究費(次年度への繰越金)が発生しているが、次年度においては、関連文献・資料の収集、内容分析のための機材等の購入、現地訪問やメディア利用分析の調査費などに充てる予定である。
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