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2012 年度 実施状況報告書

支援と受援の社会学:災害に関わる市民活動に焦点をあてて

研究課題

研究課題/領域番号 23530711
研究機関関西大学

研究代表者

菅 磨志保  関西大学, 社会安全学部, 准教授 (60360848)

キーワード災害に関わる市民活動 / 東日本大震災 / 広域(原発)避難 / 広域連携に基づく支援
研究概要

初年度に引き続き、今年度も申請時の基本的な枠組みを維持しつつ、東日本大震災で顕在化した課題に焦点を当て、当初設定した3つの領域((1)災害救援に関わる市民活動、(2)復興-減災に関わる市民活動、(3)討議の「場」)に関する幅広い情報収集と、奥行きのある実践的な調査を実施できた。
前者では、支援者・団体による情報共有・意見交換などの会合、研究者による研究経過の発表会に可能な限り参加し、現在進行形で変化する事態の全体像を概括的に把握することに務めた。その結果(1)の領域では、①企業セクターと国際NGOが大きな資源動員を伴う支援を展開、②社協VCの限界と災害NPO等の連携による新しい活動体制の実現、③全国各地で避難者受入れ支援の展開等が東日本大震災後の市民活動の特徴として指摘でき、かつ②に関わるNPOから活動実績データの提供を受けることができた。
後者では、連携研究・研究協力者の協力を得て、調査対象団体との関係構築が進み、(1)では、災害ボランティア全国ネットワークの自己検証・活動体制の検討に参画(を通じた参与観察)、(2)では、連携研究者を含む複数の社会学者と共に、原発事故の警戒区域にある自治体と避難者調査に関する連携協定を締結、併せて当該自治体の避難当事者団体主催の意見交換会の運営支援をアクションリサーチとして実施してきた。これらは(3)とも重なっており、調査を有機的に進めることができた。分析に必要なデータ(言説、活動実績)も着実に蓄積しつつある。科研費補助金により、現在進行形で変化する対象に合わせた調査活動を実施できる意義は大きい。
(4)文献調査では、連携研究者や研究協力者の助言を得て、若手研究者と文献講読の勉強会を実施、当初予定していたテーマ(支援-受援関係)に加え、今回の災害によって生じた新たな事態を考えていくための基礎文献の収集・講読を進めることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

東日本大震災の発生により、当該テーマに関する事象が大きく動いたため、過去の研究蓄積の再整理・分析よりも、災害後に発生した様々な現象の把握・分析に注力する必要が生じたが、基本的な研究の枠組みは維持しつつ、設定した課題領域(1)~(3)それぞれにおいて、連携研究者・研究協力者の協力の下、実践的な調査を実施することができ、必要な情報(言説データ、活動実績データ)を蓄積しつつある。
文献研究に関しても若手研究者との勉強会を通じて、当初予定していたテーマに加え、今回の災害によって生じた新たな事態を考えていくための基礎文献の収集・講読を進めることができ、論文発表の準備が進んだ。
当初の予定よりデータ収集にかかる時間・コストが増えたため、データ分析、成果発表に関してはやや遅れているが、発表の準備は着実に進められていること等から、「おおむね順調に進展している」と評価したい。

今後の研究の推進方策

東日本大震災の発生により、国内での調査課題が大幅に増え、かつ、現在進行中で実態が進行しているため、過去の研究の総括よりも、現在起こっている事象を追いかけることに注力する。
従って、最終年度ではあるが、調査活動に時間をかける。今年度は(2) (とそれに関連する(3))のアクションリサーチの体制作りと実施に注力してきたが、来年度は、今年度後半から(1)に関連する(3)の検討が始まったのでこちらにも注力し、海外調査は延期する(助成期間中に行わない可能性もある)。上記は主に言説の分析になるが、今年度末に災害NPOの初動対応時の活動実績データが得られたので、その分析も進めていく。文献研究に関しては、東日本大震災関連の研究成果のフォローと並行して、今年度から開始した文献講読の勉強会を継続し、調査研究方法論の分野での論文発表につなげたい。

次年度の研究費の使用計画

アクションリサーチと参与観察を継続するための調査旅費、現地調査におけるデータの収集・保存・管理・分析に必要となる物品(モバイル系機器、データストレージ)の購入に支出する。また今年度はデータの収集を継続しながら分析も進めていく必要があり、昨年度以上にデータ処理(調査記録の作成・整理、活動実績データの加工)の作業に対する謝金、調査対象・連携・協力者等との連絡・調整作業への謝金が必要になる。また成果のとりまとめ(論文の投稿、報告書の発行等)にも費用が発生する。
なお、繰越金が生じたのは主に予定していたモバイルPCの購入ができなかった(購入予定モデルが品切れており現在別モデルを検討中)ためである。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 災害が生み出したもの・生み出していくもの2013

    • 著者名/発表者名
      菅磨志保
    • 雑誌名

      Volo

      巻: 483 ページ: 36-37

  • [雑誌論文] 支援をめぐる関係性2012

    • 著者名/発表者名
      菅磨志保
    • 雑誌名

      社会安全学研究

      巻: 2 ページ: 26-27

  • [雑誌論文] 原発避難をめぐる諸相と社会的分断――広域避難者調査に基づく分析2012

    • 著者名/発表者名
      山下祐介・山本薫子・吉田耕平・松薗祐子・菅磨志保
    • 雑誌名

      人間と環境

      巻: 38-2 ページ: 10-21

  • [雑誌論文] How Does the Restoration of Tohoku Society Begin? Center and Periphery in the Great East Japan Earthquake2012

    • 著者名/発表者名
      Yamashita, Yusuke
    • 雑誌名

      International Journal of Japanese Sociology

      巻: 12 ページ: 6-11

    • 査読あり
  • [学会発表] 原発避難の諸相――自助組織支援に焦点をあてて

    • 著者名/発表者名
      菅磨志保・吉田耕平
    • 学会等名
      近畿ろうきんNPOパートナーシップ制度「第二回復興支援プラットフォーム」(基調講演
    • 発表場所
      近畿ろうきん(大阪府)
    • 招待講演
  • [学会発表] 東日本大震災をめぐる阪神/東京/福島――広域システム災害という視角から

    • 著者名/発表者名
      山下祐介
    • 学会等名
      第63回関西社会学会大会「シンポジウム<3.11以前>の社会学―阪神淡路大震災から東日本大震災へ」
    • 発表場所
      皇學館大学(三重県)
    • 招待講演
  • [図書] 大震災の社会学(第1章「広域システム災害と主体性への問い」を分担執筆)2013

    • 著者名/発表者名
      船橋晴彦・田中重好・正村編著(分担執筆:山下祐介)
    • 総ページ数
      348(1章27-46)
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
  • [図書] 東北初の震災論――周辺から広域システムを考える2012

    • 著者名/発表者名
      山下祐介
    • 総ページ数
      286
    • 出版者
      筑摩書店

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公開日: 2014-07-24  

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