これまで福祉政策と都市政策という二つの領域は、十分な連携がなされぬまま展開してきたが、現在では両者の統合を図っていくことの重要性がきわめて大きくなっている。本研究では、「福祉政策と都市政策の統合」というコンセプトを確立・理論化するとともに、両社の統合が具体的にどのような形で実現できるのかを明らかにし、それらを踏まえた「福祉都市」等のビジョンやモデルを定式化していくことを目的としている。 昨年度においては検討の中で「コミュニティ経済」という概念が浮上し、その概念枠組みの整理とともに、1)福祉商店街、2)農業関係のコミュニティ経済、3)団地関連のコミュニティ経済といった具体的類型の吟味を行い、また「鎮守の森・自然エネルギーコミュニティ構想」という、鎮守の森という伝統的社会資源と自然エネルギーという現代的課題を結びつけた地域再生の新たなモデルについての検討を進めた。 以上を踏まえて25年度においては、一方において「福祉都市」についての具体的なビジョンや課題をまとめ、他方において「コミュニティ経済」という概念を軸とする地域再生のモデルづくりを理論面及び事例面の双方において進め、これらを通じ、まちづくりの空間面に関する前者(福祉都市)と、地域の経済循環に関する後者(コミュニティ経済)とが、地域の再生・活性化にとっての車の両輪であることを明らかにした。このことによって、従来にない包括的な都市ないし地域再生のモデルや概念枠組みを一定程度示すことができた。
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