研究課題/領域番号 |
23530728
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
嶌末 憲子 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 講師 (80325993)
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研究分担者 |
小嶋 章吾 国際医療福祉大学, 医療福祉学部, 准教授 (90317644)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 生活支援記録 / 生活場面面接 / ICF / IPW / 多職種協働 / ケアワーカー / ソーシャルワーカー / ケアマネジャー |
研究概要 |
本研究は、介護現場におけるケアワーカー等(以下、ケアマネジャーやソーシャルワーカー等を含む。)によるアセスメントや生活場面面接の実践能力の向上に資する「生活支援記録法」を開発し、多職種協働においても有用であることを示すことを目的としている。前年までの研究成果をもとに、介護現場の多職種協働において活用できるよう、「生活支援記録法」の定義や、生活場面面接並びにICFとの関係について整理した。 フィールドでの介入研究としては、介護現場(特別養護老人ホームや在宅ケア)において、ケアワーカー等への段階的な研修を実施したが、その結果、「生活支援記録法」の活用には生活場面面接の意図的な活用が条件となることが確認された。また、ケアワーカー等の職能団体でにおける2段階の現任研修等を通じ、多職種協働のもとでの「生活支援記録法」の活用には、ICFや協働実践に関する知見との関連づけが不可欠であることが判明した。また本知見は多職種協働が進むオーストラリアにおいても普及できる可能性が示唆された。 具体的な研究成果としては、「生活支援記録法」のあり方について、(1)M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)により解明した「利用者の持てる力を高める」プロセス、(2)「介護実践構造図」(ICF版を含む)における理論化、(3)IPWの構造と要素、(4)医療職を含めた評価・検証とICFとの関係について整理し、研修のための教材やマニュアルを作成した。また、介護現場における効果的な事例・場面の検討等を通じ、「生活支援記録法」の意図的活用には一定の時間を要することが確認された。「生活支援記録法」のための研修段階では、利用者(効果・変化)や、ケアワーカー等の専門性向上ややりがいとともに、モニタリングやケアプランとの連動性、さらには医療職との多職種協働等の点で意義があることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)施設版では特定のケアワーカーを対象とするのではなく、施設全体の研修として位置づけられた。(2)効果測定では比較対照群を設定することができた。(3)介護保険改正や生活場面面接の定着を待つため、施設における介入研究については期間をおいて、次年度も継続することになった。(4)次年度に予定していた在宅分野でも着手できた。(5)マニュアルなどの教材も、介護の専門性の観点から深めることができ、論文やテキスト類による発表ができた。(6)M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)による研究の応用例として評価された。(7)多職種連携が進むオーストラリアにおいても研究成果の普及の可能性を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
「生活支援記録法」の定義を、多職種協働による利用者のチームケアにおいて、生活支援を専門とするソーシャルワーカーやケアマネジャー、ケアワーカーによる観察、支援の根拠、利用者とその環境(家族、集団、地域及び専門職)との相互作用(働きかけと反応)、利用者の生活変化、これらを基にしたケアプラン反映への根拠等を他職種に明示可能な経過記録の方法である、としたが、前年度までの理論研究から、さらに本研究の重要性が確認されたため、実践適用できるよう計画を進めていく。 具体的には、多職種協働において生活場面面接やICFとともに、「生活支援記録法」が生活支援方法のひとつとして有用な知見であることを、国内外において提言できるよう、成果の公表にも力点をおいていきたい。現在介入中のフィールドにおいても、実践に役立つ理論が求められいていることが要望されたため、分かりやすい教材づくりも研究計画として重視したい。 平成24年の研究計画を経た2年後の目標として、(1)M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)により、本記録法が福祉職間の協働を基盤に、実践向上を促進するプロセスを明らかにする。(2)「生活支援記録法」活用による多職種協働における社会福祉実践向上促進のプロセスについても、明らかにする、ことを目指したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.前年度の方法を修正後、継続して生活支援、生活場面面接、多職種協働、ICFに関する理論化と教材開発を継続する。2.施設と在宅のフィールドを対象とし、当初の計画にて試行・検証する。 在宅では、研修での共通理解を図るべく、訪問介護員には、関連文献等による事前学習を依頼する。3.両フィールドでの本記録法の継続事例をもとに、本記録法の定義・特徴を検証する。在宅では訪問介護員に対するモニタリング機能への期待が大きいため、サービス担当者会議などを通じ、関係者の意見を可能な範囲で確認できるよう、柔軟に対応する。4.協力先にて「生活支援記録法」を継続した事例から、効果の有無別に典型例を計5事例ほど抽出し、ケアプランと照合した結果をもとに、協力者へのグループインタビューにより、定義や特徴について検証する。具体的には、効果的な事例や場面ついて確認後、従来の記録法で十分な場合について整理し、本記録法の効果的活用例として収集する。上記のプロセスを経てマニュアルを改訂する。
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