研究課題/領域番号 |
23530728
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
嶌末 憲子 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (80325993)
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研究分担者 |
小嶋 章吾 国際医療福祉大学, 医療福祉学部, 准教授 (90317644)
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キーワード | 生活支援記録 / 生活場面面接 / ICF / IPW / 多職種協働 / ケアワーカー / ソーシャルワーカー / ケアマネジャー |
研究概要 |
「生活支援記録法」の定義を「多職種協働による利用者のチームケアにおいて、生活支援を専門とするソーシャルワーカーやケアマネジャー、ケアワーカーによる観察、支援の根拠、利用者とその環境(家族、集団、地域及び専門職)との相互作用(働きかけと反応)、利用者の生活変化、これらを基にしたケアプラン反映への根拠等を他職種に明示可能な経過記録の方法である」としたうえで、以下4項目を実施した。 1.前年度の方法を修正後、継続して生活支援、生活場面面接、多職種協働、ICFに関する理論化と教材開発を継続した。 2.施設と在宅のフィールドを対象とし、試行・検証を試みた。施設では当初の計画では一部であったが、研究協力先の希望により、全職員での試行を継続している。計画では、電子化は最終段階で一部試行を考えていたが、これも実施中である。在宅では、研修での共通理解を図るべく、訪問介護員には関連文献等による事前学習を依頼して取り組んでもらった。先行してケアマネジャーに試行したことから、OJTにより、ケアマネジャーがサービス提供責任者に伝承してもらうことが有効であった。 3.両フィールドでは、生活場面面接の展開後に、本記録法の意義が高まることが事例研究でも、質問紙調査の結果でも、明らかとなった。以上のことから、本記録法の定義・特徴を検証できた。 4.協力先にて「生活支援記録法」を継続した事例から、効果の有無別に典型例や場面を抽出し、ケアプランを照合した結果を提供し、協力者へのインタビューにより、定義や特徴について検証した。具体的には、効果的な事例や場面ついて確認後、従来の記録法で十分な場合について整理し、本記録法の効果的活用例を提案した。上記のプロセスを経て教材を再検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
①施設版では特定のケアワーカーを対象とするのではなく、施設全体の研修として位置づけられ、効果測定についても比較対照群を設定することができた。 ②介護保険改正や生活場面面接の定着を待つため、施設における介入研究については期間をおいて、次年度も継続したことにより、研究協力者自らが、これまでの経過の一部を発表するに至った。 ③在宅分野でも、施設では数の少ないケアマネジャーがほぼ全員、継続して生活支援記録法による試行例をもとに場面検討ができた。直ぐにできる場合もあれば、十分な理解に至らなかった場合もあったが、試行例を分析することにより、グループインタビューを実施せずとも、研修を通じて教材の改善を図ることができた。 ④マニュアルなどの教材も、介護の専門性の観点から深めることができ、テキスト類による発表ができた。 ⑤M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)による研究の応用例として評価を受け、職能団体への連載依頼を受けた。 ⑥多職種連携をテーマとする国際学会(ATBHVI)においても、研究発表に対する反響を得た。 ⑦遠距離のためフィールド先として依頼していなかった事業所についても訪問し、自ら実践発表しているサービス提供責任者から、教材開発に関する有用な示唆を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
「生活支援記録法」の定義は現時点では変更はない。介護職段位制度でも、生活支援記録法が意味する記録法に着目しているが、その前提となる生活場面面接を示す内容については、コミュニケーションに含まれていないため、理論研究もふまえ、さらに本研究の一連の研究成果について、実践適用できるよう計画を進めていく。 具体的には、「生活支援記録法」が多職種協働において、生活場面面接とともに、生活支援のあり方として、ICFとともに有用な知見であることを、国内外において提言できるよう、実証的な研究とともに、理論研究成果の公表にも力点をおいていきたい。現在介入中のフィールドにおいても、実践に役立つ理論が求められいていることが要望されたため、分かりやすい教材づくりも研究計画として重視したい。 最終年度の目標として、「生活支援記録法」活用による多職種協働における社会福祉実践向上促進のプロセスについても明らかにすることを目指したい。当初はM-GTAによる分析を計画していたが、昨年度までの質的分析によれば、KJ法でも可能であることが確認された。 また、介護職段位制度に関連づけて実践適応を図ることや、教育評価の潮流をふまえるならば、ルーブリック法による体系化についての検討を試みていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費が生じたのは、質的研究のデータ入力を研究者が実施していること、予定していた有識者へのインタビューが一人できなかったためである。しかし、データ入力については、最終年度は計上していなかった質問紙入力を依頼するため必要となる。 1.施設および在宅での継続的な研修と試行。 2.評価のための質問紙調査とインタビューの実施。 3.ルーブリック法による目標と要素、段階について体系化を図る。当初の計画にはなかったが、今後の潮流を見据えて一部でも取り入れることを試みる。 4.KJ法と事例研究法による効果について、多職種協働の観点から分析。KJ法により多職種実践についての全体像を示し、事例分析により、多職種への効果についても明示する。 5.生活支援記録法の典型例の整理。全ての記録を生活支援記録法で実施することは、介護現場では望まれないため、典型例を整理して示すことが次項にもつながる。 6.生活場面面接を基盤とした生活支援記録法の段階的実施に向けたマニュアルの作成。施設および在宅において、介護職とソーシャルワーカー、ケアマネジャーのいずれもが、段階的な実施により、生活支援記録法の意義が理解されることが確認されてきた。生活支援の理論として整理しつつ、普及のためには分かりやすいマニュアルが必要である。 7.フォールドに対する研究成果のフィードバック。 8.学会やテキスト等における研究成果発表。 9.研究成果報告書の作成。
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