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2012 年度 実施状況報告書

M.E.リッチモンドのソーシャルワーク構想の研究

研究課題

研究課題/領域番号 23530731
研究機関福井県立大学

研究代表者

日根野 建  福井県立大学, 看護福祉学部, 准教授 (30388657)

キーワード国際情報交換 / アメリカ / ソーシャルワーク
研究概要

平成24年度には、第1に前年度に着手したリッチモンド(M.E.Richmond)自身の著作や彼女に関係する先行研究の再点検と再整理を引き続いて行うとともに、前年度にコロンビア大学図書館で収集したリッチモンドの職能団体や養成学校の構想に関する史料の整理や解読を進めた。ここから、大きく次の2点を成果として上げた。
1つには、「M.E.リッチモンド―ソーシャル・ケース・ワークの母(第18章)」として室田保夫編『人物でよむ西洋社会福祉のあゆみ』ミネルヴァ書房(近刊)に寄稿したことである。ここでは、リッチモンドの生涯を、慈善組織協会の入職以前に紡いだ思想や、職能団体や養成学校に関する構想をも盛り込み、先行研究を書き直して提示した。また、いま1つは関西社会福祉学会年次大会(2013年3月10日)で「ケースワークの視座形成―リッチモンドの前半生と二著作より」と題して自由研究発表を行ったことである。ここでは、ケースワーク論の確立をなした『社会的診断』(1917年)や『ソーシャル・ケース・ワークとは何か』(1922年)に先行する『貧困者に対する友愛訪問』(1899年)と『現代都市における善き隣人』(1907年)に、リッチモンドの文学嗜好や宗教信仰に根ざしたソーシャルワークの視座形成の萌芽があることを報告した。
また平成24年度には、第2に最終年度に仕上げる研究成果の全体像を描き出す予備作業として、リッチモンドのソーシャルワーク構想を取り巻いて影響をもたらした時代状況の詳細な把握ほか主要な人物や文献の特定等を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ソーシャルワーク構想が収斂するリッチモンドの生涯や、ソーシャルワーク構想が始動するリッチモンドの著作に関しては一定の整理がついた。前者では、ソーシャルワークの職能団体や養成学校など専門職化をめぐって先行研究を書き改めることができた。また、後者は先行研究が閑却するが、リッチモンドが果たすソーシャルワークの視座形成には重要な内容があった。この著作は、リッチモンドのケースワーク論の萌芽にあたり、彼女の生涯に一貫した専門職化をめぐるソーシャルワーク構想の土台をなす。
しかし、そこでは最終年度に仕上げる研究成果の全体像を、慎重を期して入念に検討する必要を覚えて、学術論文の発表や海外古書の購入を持ち越した。また、諸般の事情によりコロンビア大学図書館の再訪が不可能となり、また予定の国内大学図書館の訪問が不十分となった。このことにより、具体的にはリッチモンドの専門職化に関係して日本には所蔵がないアメリカ・ソーシャルワーカー協会の機関誌The Compassの初期巻号の閲覧や、また彼女の教育活動に関係して日本には所蔵がないNew York School of Social Workに関する研究著作の閲覧を果たすことができなかった。そして、このことと関係して予定にあった資料の整理や保管のための若干の環境整備も延期した。
ただし、最終年度の当初計画に結び付けるために、かわって平成24年度には最終年度に仕上げる研究成果の全体像を描き出す予備作業を行った。このことにより、当初の研究目的の達成をはたす予定である。

今後の研究の推進方策

まずは平成25年中に、リッチモンドの慈善組織協会の入職以前の来歴や、文学嗜好や宗教信仰が紡いだ思想に関する学術論文、また『貧困者に対する友愛訪問』(1899年)と『現代都市における善き隣人』(1907年)に関する学術論文を発表する。以上は、関西社会福祉学会年次大会(2013年3月10日)で「ケースワークの視座形成―リッチモンドの前半生と二著作より」と題して行った自由研究発表に基づく。さらに、一昨年度にコロンビア大学図書館で収集したソーシャルワークの職能団体や養成学校に関するリッチモンドの専門職化や教育活動の史料紹介を行う。
そして、以上を踏まえた成果を総合して、今年度中にはリッチモンドのソーシャルワーク構想の核心として19世紀末葉から20世紀初頭にかけて社会福音運動や社会科学運動に影響をうけて彼女が形成するソーシャルワークの視座、そして職能団体や養成学校の整備動向に関する学会発表を行うとともに、学術論文の発表または投稿を行う。くわえて、この研究成果を平易に書きまとめて社会福祉士会等に配付するためのブックレットを作成する。
以上は、最終年度に仕上げる研究成果の全体像を描き出す予備作業に基づいて、高額な海外古書の最小限の体系的な入手、コロンビア大学図書館ほかニューヨーク市立大学図書館など海外大学図書館や同志社大学図書館ほか関西学院大学など国内大学図書館の利用、また必要に応じてRockefeller Archive Centerで特定済みの史料の効率的な入手をはかり、行う。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度には、最終的な研究成果を平易に書きまとめて社会福祉士会等に配付するためのブックレットの作成費用をふくめ、基本的には当初計画どおりの研究費の使用を見込む。
前年度より持ち越した分に関しては、たとえば海外古書の購入や研究環境の整備など前年度計画の限度額に即した研究費の使用を計画する。また、諸般の事情により昨年度にはコロンビア大学図書館の再訪が不可能であったため、今年夏期に計画する再訪時には持ち越した研究費の限度額の使用で予定より長期に滞在することを計画する。またこのとき、必要に応じてRockefeller Archive Centerの訪問を検討するが、現時点では以前訪問時に収集した史料にて研究成果を見込むことが可能であり、より必要な史料の一つ(アメリカ・ソーシャルワーカー協会の機関誌The Compass)の全巻所蔵がコロンビア大学に近いニューヨーク市立大学図書館にあり、優先して訪問することを計画する。そこでは、図書館利用料や文献複写料が必要な場合、限度額内の使用を計画する。なお、コロンビア大学図書館では現時点で利用料の免除を受けることができている。さらに、国内大学図書館では同志社大学のほか関西学院大学などに所蔵がある文献(たとえば、Journal of Social Work Education)の閲覧のための宿泊旅費や文献複写料も限度額内で工面する。
なお、研究の進捗にあわせて、時間的に学術論文の発表を優先して学会発表の回数を当初計画より減らし、以上の宿泊旅費に置き換えることも検討している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] ケースワークの視座形成―リッチモンドの前半生と二著作より2013

    • 著者名/発表者名
      日根野建
    • 学会等名
      関西社会福祉学会
    • 発表場所
      関西大学堺キャンパス
    • 年月日
      20130310-20130310
  • [図書] 「M.E.リッチモンド―ソーシャル・ケース・ワークの母(第18章)」『人物でよむ西洋社会福祉のあゆみ』2013

    • 著者名/発表者名
      日根野建
    • 総ページ数
      7
    • 出版者
      ミネルヴァ書房

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公開日: 2014-07-24  

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