本研究は日本のワーキングプアを脱工業化の視点から考察し、その生活実態及び生活問題の特質を明らかにし、自立支援に資する政策提言を提示することを目的とする。平成26年度の研究実績を以下に示す。 1.B市住宅手当緊急措置事業受給者調査結果再検討 受給者51ケースのうち中止ケース22、延長ケース10について再検討した。中止とは、住宅手当支給期間(6ヶ月)以内に支給を中止したケースであり、延長は支給期間内に再就職できなかったケースである。中止は、早期に就職できて手当を中止することができた者と、求職活動を継続できなかった者の2種類に分かれる。中でも生活保護に切り替わったケースは、住宅手当受給後1~2カ月で切り替わっており、住宅手当だけでは生活を維持することができなかったといえる。延長の就職割合は40%と低く、長期に手当を支給しても就労促進効果は上がっていない。 2.オランダ公的扶助改正について 2004年に現在の労働扶助法に改正され、就労義務が強化された。オランダを訪問し、基礎自治体、関連機関聞き取り、先行研究検討を行った。改正から10年を経た2014年では以下のことが課題であることが明らかになった。①改正当初失業者の社会復帰を考えていたが、実際の受給者の中心は、健康状態が悪く、教育水準が低い。②社会復帰方法の見直し。民間企業に委託していたが、最も容易に労働市場へ戻ることができる人を中心としており、効果は期待したほどではなかった。③若年障害者の存在である。労働扶助法受給者は減少したが、労働市場へ戻ったのではなく、若年者のための障害給付(Wajong)受給者が増えている。これを受けて、2015年から新たな障害者の社会参加に関する法律が施行される。公的扶助改正が政策としての評価がなされている点は学ぶべき点と考える。
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