研究課題/領域番号 |
23530733
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研究機関 | 静岡文化芸術大学 |
研究代表者 |
高山 靖子 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 准教授 (80460517)
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研究分担者 |
古瀬 敏 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 教授 (60367597)
池田 千登勢 東洋大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40434063)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ユニバーサルデザイン / デザインマネジメント / 福祉事業所 |
研究概要 |
障害者自立支援法による障害者福祉事業所(作業所)への負担軽減のための施策として厚生労働省が計画した「工賃倍増5カ年計画」の結果を測るべく厚生労働省が主催した優れた授産製品開発の取り組みを表彰する「至福のお届けコンテスト」と、各県や作業所自身のHP、さらに、不参加自治体の理由を合わせて調査のうえ、優れたデザインマネジメントを実施していると思われる表彰作業所をピックアップし、調査対象の抽出を行った。この基礎調査から、表彰された作業所のほとんどが食品分野であったことが判明したため、初年度は食品にターゲットを絞り、調査を実施することとした。調査対象は、最優秀賞の「おからかりんと」(ワークセンターなごみ)とそれをサポートする新潟県の福祉課、優秀賞の「伊達の燻製」(レストランぴぁ)と宮城県福祉課と宮城セルプ協会、受賞は逃したものの他の書籍において「地域活性化に取り組んでいる先進的・代表的な事例」に取り上げられた静岡県福祉課と授産製品品質向上販売促進プロジェクトの担当者に対して聞き取り調査を行った。この結果をもとに、各作業所とプロジェクトのマネジメント方法を分析し、比較することによって、成功要因と不成功要因を抽出した。また、それに対する行政のサポートについても、聞き取り調査の内容と照合させることにより、効果の有無について検証を行った。以上のデータを静岡県授産製品品質向上販売促進プロジェクトにおいて報告し、プロジェクト促進に役立てた。また、国際会議IASDR2011において口頭発表を行った。次年度への準備として、木工やクラフトなどを生産する作業所を抽出し、訪問依頼と事前アンケートを実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査対象を確定する事前の調査過程において、一般消費者を対象として販売される授産製品は食品関連が多いことやコンテストにおいても食品分野の受賞が上位を占めていたことから、カテゴリー分類を当初予定していた「食品・木工・縫製・他」から「食品・他」に変更して調査を行うこととした。そこで、「食品」カテゴリーにおける取組状況や成功要因について集中して調査と分析を行った結果、行政のサポートの有効性も本研究において重要な要因となることが判明し、分析の対象を広げることとなった。また、調査途上で、優れたユニバーサルデザインマネジメントへの取り組みを民間で行っている事例を発見したため、24年度は、サポート側のユニバーサルデザインマネジメントの比較へも調査の対象を広げる予定である。食品以外の調査についても、すでに調査対象の作業所も決定し、現在、聞き取り調査の実施時期(24年度前半)を交渉しており、食品以外で受賞しているクラフト系のデザインマネジメント状況の調査と分析を行い、「他」カテゴリーの成功要因の抽出が可能であると考えている。このように、23年度後半から24年度後半にかけてデータの収集を中心に行うという当初の予定通り、23年度前半に調査計画を設計し、23年度後半からは若干の修正を加えながらも順調に調査が進行している。また、23年度に得られた研究の成果については、一部をIASDR2011(オランダ)において口頭発表を行い、DRS2012(7月/タイ・バンコク)とKEER2012(5月/台湾)においては、23年度調査を基にした論文が採択され、発表が決定している。以上のように、25年度に行うという当初の予定より早い段階で、成果の一部を発表することができた。引き続き調査を行い、さらなる知見を加えて、研究成果を高めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
24年度の前半は、23年度に集中して行った食品関係の授産製品に関するマネジメント調査を引き続き行うとともに、24年度に得た結果をベースとしてヒアリング内容を設計し、食品以外のカテゴリー商品を生産する作業所と管轄する自治体の担当者に対してヒアリングを行う。現在、島根県(いわみ、神楽面)(よつば、張り子の虎)、沖縄(そてつの実、立体ステッカー)、熊本県(阿蘇くんわの里、馬油保湿化粧品)、神奈川(あすなろ学苑、ジャム)に対してのヒアリング実施が決定している。この中には、厚生労働省主催の至福のお届けコンテストにおいて、入賞した作業所とそれ以外が含まれており、両者の企画・生産・流通・マーケティングなどのマネジメントや行政のサポートを比較することによって、成功要因を抽出する。また、24年度中盤には、上記に加え、民間組織で行った授産製品に対するサポートを行い、23年度にGOOD DESIGN賞を受賞した「テミルプロジェクト(株式会社テミル)」の事例と、特定非営利活動法人・日本セルプセンターの「デザイン活動支援事業」(複数の作業所に対してデザインマネジメントによるサポートを試みた事例)に対して調査を実施し、その結果と手法の比較と分析を行うことによって、成功や失敗要因の抽出を行う。24年度後半から25年度にかけては、これらの分析結果をまとめて、作業所に対するサポートとしてなすべきデザインマネジメントの手法と行政や市民のサポートの在り方を導き出す。その提案を研究の成果を国内の学会(日本デザイン学会、感性工学会、日本福祉のまちづくり学会等)にて発表を行うためのまとめと準備を行い、25年度に日本国内で開催されるIASDR2013(日本)において発表を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、引き続き、各地方における福祉事業者へのインタビュー調査を行うため、研究代表者、協力者ともに各地方への複数回の出張が必要であり、発表のための国内外の出張も含めて研究費を旅費として使用する。加えて、インタビューのテープ起こしや収集した資料の整理のための学生アルバイトや外部委託のために謝金などに使用する。また、研究成果を国際会議で発表するための翻訳の経費にも使用する。さらに、前年度購入予定であった発表やインタビューに使用するモバイルPCについては、23年度は既得のPCを使用していたが、老朽化したため、本年度に新規購入予定である。他に、研究の分析ための参考文献や資料の整理のための用紙や文房具などの消耗品に使用する予定である。
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