研究課題/領域番号 |
23530734
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
田川 佳代子(沖田佳代子) 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (10269095)
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キーワード | ソーシャルワーク / クリティカル理論 / 抑圧 / 社会正義 / ケア / モダニズム / ポストモダニズム / ポスト構造主義 |
研究概要 |
本研究の全体構想は、グローバル化が進展するポスト福祉国家の脈絡において、多様な諸問題をもつ人々の相談援助に関わる専門職として、ソーシャルワークの実践を規定する枠組みを再考、再形成することを目的としている。 特に、今年度実施した研究は、クリティカル・ソーシャルワークを構成する理論的要素について、先行研究でなされてきた討議を中心に調べた。これは伝統的ソーシャルワークの枠組みとは異なる枠組みによって組織される、オルタナティヴなソーシャルワークの形成を意味する。 オルタナティヴなソーシャルワークの枠組みを構成する要素の1つとして、クリティカル理論について検討した。クリティカル理論は、モダニストとポストモダニストの2つの反駁する視座を包含する。ソーシャルワークの枠組みにおいて、階級や、民族、ジェンダー、障害のあらゆる形態に共通する抑圧と支配の構造的諸問題を普遍的現象として認識するモダニストの立場と、それとは一線を画す、異なる脈絡、異なる場所、異なる人々に、異なる経験がなされると主張するポストモダニストの立場、この両者のダイナミックなぶつかりあいがもたらす寄与について検討した。 もう1つは、個人的諸問題を構造的な不正義の結果と捉える構造的アプローチに対し、クリティカルな省察を踏まえ、ポスト構造主義が与える主体に関する理論的基礎を調べた。この主体についての議論は、抑圧の構造、フェミニストの立場からの正義論とケア論などと一緒に検討を行った。 ソーシャルワークの枠組みを形成する構成要素の理論的検討を行うことは、ソーシャルワークのあり方、目的、役割、責任の再考の促進につながるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、年間計画の前半で文献研究を行い、後半にフィールドワーク、インタビュー調査を行うとし、その期間に学会発表・論文の作成を行うものとしていた。 昨年度からの研究成果の一部は、今年度の紀要論文にまとめ発表したが、今年度に検討した研究成果を今年度中にとりまとめ発表するところまで至らなかった。研究の重要な部分にさしかかり、文献調査で扱う一つ一つの構成要素は、それぞれが政治学、社会学、歴史学、文化人類学、心理学、哲学など、社会福祉学以外の学問分野の研究成果の渉猟と、他方では、研究の視角や枠組みに沿って、本研究の論点を整理していくことの課題とがあり、時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
理論的枠組みの一つ一つの構成要素について、政治学、社会学、歴史学、文化人類学、フェミニズム論など、社会福祉学以外の学問分野の研究成果の渉猟しながら、研究の目的に沿って、論点を整理し、討議内容を精緻化し、論文としてとりまとめを行う。 本研究の核心的部分について取り扱う論文は、学会に投稿し査読を受ける。 研究計画では、年間計画の前半で文献研究を行い、後半にフィールドワーク、インタビュー調査を行う。その期間に学会発表・論文の作成を行うものとしていたが、論文作成の遅れから、研究成果の発信として予定していた、映像資料の作成、ホームページの作成が進まないでいたが、今後、研究の推進のなかでそれらを合わせて遂行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
・様々な学問分野の研究図書の入手に際し、なかには、絶版のものも多くあり、新品でなく中古でも価格の高騰しているものが少なくない。購入か、文献貸借かいずれかの方法で入手する費用を計上する。 ・研究論文を海外の研究雑誌に投稿するための費用、英語論文の校閲費を計上する。 ・クリティカル・ソーシャルワークの主張を映像資料を通じ、ホームページを作成し、発信するための費用を計上する。 ・フィールド調査、インタビュー調査にかかる謝金、旅費、テープおこしの費用等を計上する。
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