研究課題/領域番号 |
23530736
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
竹本 与志人 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (70510080)
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キーワード | 血液透析患者 / 精神的健康 / 主介護者 |
研究概要 |
透析患者の心理は、先行研究において透析歴で区分した心理的段階が提唱され、段階毎に特徴がみられると報告されているものの、経験的な提言にとどまっており実証的な検証が行われてこなかった。本年度は、透析患者の心理的適応に向けた心理的段階と変容過程を明らかにすることを目的とし、インタビュー調査を実施した。 調査対象者は岡山県腎臓病協議会に相談し、現在心理的適応状態にある患者(6名)を紹介いただき、調査の主旨を十分説明したうえで協力を依頼した。調査は本学の村社卓准教授、桐野匡史助教とともに実施した。 分析の結果、透析患者の心理は「混乱」、「変化」、「共存」に分類することができると考えられ、「混乱」から「変化」、「変化」から「共存」へと展開するものと推測された。しかしながら、6名全員が肯定的な考えを持ち,透析を受ける医療環境にも比較的恵まれていることから、今後は様々な特性ならびに医療環境に置かれている患者からデータを収集し、さらなる分析を行うことが課題と考えられた。また、「変化」と「共存」には肯定的なものと否定的なものが存在することが推測され、この点についてもデータ収集により詳細に確認していくことが求められる。以上のような課題が残っているものの、中途障がい者(身体障がい者)の心理的段階と変容過程(障がい受容過程)に近い知見が得られ、内部(腎機能)障がい者である透析患者にもおおむね共通した心理的段階と変容過程が存在する可能性が示唆されたことは大きな成果であったといえる。 この調査のほか、平成23年度に行った予備調査の成果について日本社会福祉学会第60回秋季大会でポスター発表を行い、日本介護福祉学会誌(介護福祉学)に論文投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は文献検討に加え、予備的調査が実施でき、平成24年度は予定していたインタビュー調査も実施できた。両調査結果を踏まえ、平成25年度は予定通り大規模調査が実施できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度までの研究成果を基礎に、岡山県下の透析患者ならびにその主介護者を対象にアンケート調査を実施する予定である。調査票の内容については岡山県腎臓病協議会と充分検討を行うことができている。また、調査票の回収率を高めるため,岡山県腎臓病協議会ならびに岡山県医師会透析医部会に協力承認を得ている。調査は平成25年5月に調査協力の諾否を県下の透析施設へ文書にて尋ね、6-7月にかけて実施予定である。調査票には次の項目を予定している。 ①透析患者:属性,透析の種類,透析歴,合併症の有無,日常生活動作(Katz Index),診療形態,就労状況,精神的健康(K6,GHQ-12),心理的段階,家族機能認知,ソーシャルサポートネットワーク,専門職への援助不安など ②主介護者:属性,療養支援の代替者の有無,療養支援における負担感(FCB),療養継続困難感,健康度自己評価,精神的健康(K6,GHQ-12),家族機能認知,ソーシャルサポートネットワーク,専門職への援助不安など これらの量的研究は本学桐野匡史助教,本学大学院生(杉山京、他2名)とともに実施する予定である。 平成23年度の予備的調査で得られた成果については、学会等で十分に報告できていないことから、日本社会福祉学会等で発表する予定である。合わせて本年度の調査データが入力でき次第、学会発表ならびに論文投稿を行う予定である。これらの学会発表ならびに論文投稿は、研究代表者と本学大学院院生の杉山京が中心となり、実施予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査研究に係る費用として、調査票印刷代、郵送費、封筒や用紙などの調査に必要な事務物品、発送作業やデータ入力などの研究補助にかかる人件費、学会発表や論文投稿に係る出張費、解析ソフト、文献費等が挙げられる。 平成23年度の予備的調査で得られた成果について、研究代表者や本学大院生の杉山京がそれぞれ筆頭で日本社会福祉学会ならびに日本介護福祉学会等にて発表を予定しており、そのための経費も必要である。また、本年度の調査データが入力でき次第、他の学会での発表ならびに論文投稿を予定しており、研究代表者と本学大学院院生の杉山京がそれぞれ筆頭で行う予定であり、そのための経費も合わせて必要である。
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